私にとっての歴史とは…
MXテレビで西部邁先生が吠えたとの情報をいただき、さっそくYouTubeで探したらありました。
うん、たしかに面白い。日曜日の真っ昼間に地上波でこういう言説が聞けるなんて。まだまだテレビも捨てたものじゃない。ま、MXが特殊なんですけどね。
それでも、どうでしょう。いつもワイドショーばかり見て聞いている人たちが、こういう硬派な言説を耳にすると、どう感じるんでしょうか。
慣れていないから、全然耳に入ってこないという人もいるでしょう。それもあり得ます。
人によっては、なんだか生理的に拒否反応を示すかもしれない。特に核廃絶なんかとんでもない!という話なんか。
しかし、私たちが賢い大衆であるためには、こういう言葉にも耳をしっかり傾けなければなりません。もちろん、西部先生の考えに完全に賛同せよと言っているのではありませんよ。
堀潤さんはかなり冷静に対処していますが、それは堀さんだからであって、たとえばいくらハッタリの得意なワタクシであっても、もし西部先生と討論したら、一気に押し潰されておしまいでしょうね。
そう、西部先生みたいな昭和の論客って、「コト」の権化みたいなものなんですよ。だからコト勝負では絶対かなわない。当たり前です。知識(コト)の量が違いすぎますから。
ただ、押し潰されながらも、どこか反論したい、できないけれども違う意見を言いたい、そんな自分もいます。現実主義者ではなく、あくまでも理想主義者でいたい。夢想家、お花畑と言われるかもしれないけれども。
そうでないと、私たちは、いつまでも過去と現在にとらわれた思考しかでないと思うのです。そこには進化はありません。深化はあるかもしれませんが、未来に飛翔することは難しいような気がします。
昨日紹介した、高城剛さんとの対話は、そういう意味では完全に「モノ」世界であって、つまり「物語」であって、だからこそ、伝わる部分と伝わらない部分とがあると思いますし、それこそ全く科学的でない妄想にすぎないと言われてもしかたありません。
しかし、たとえば過去の歴史についても、私は仲小路彰の言うとおり、未来の視点から眺めたいのです。
この前もどこかに書きましたが、私にとっての「歴史学」は、事実(コト)として何があったかよりも、その時生きた人間たちが、(その時の)未来に対して何を妄想したかを知る作業なのです。
大東亜戦争についても、あの時はみんなが真剣に日本の未来、アジアの未来、世界の未来を妄想したのです。いろいろな妄想が絡み合って、一つの事実に収斂していった。その一つの事実だけを見るのは間違いです。
未来からの視点とはそういう意味です。そういう意味で私は、さまざまな神話(近代以降に生まれたものも含む)にも興味がありますし、いわゆる偽史にも、あるいはフィクションたる文学や映画にも興味がある。
そこには、それぞれ生きた人間の未来への妄想があるからです。それが庶民の、程度の低い妄想であっても。
西部先生の言説には、そういう生きた人間の妄想、それも「良き妄想」があまり感じられません。「悪しき妄想」は時々出てきますけれど。
まあ、たしかに今までの歴史は、「悪しき妄想」が「良き妄想」に勝つことが多かったと言えますが。
それでも「良き妄想」の勝利を確信する私は、きっとはたから見ると、とってもリベラルな人間なのでしょうね。いや、宇宙人だから気にしなくていいのか、そんな分類(笑)。
まあそれは冗談として、私にとっての歴史とは「その時生きていた人たちが、その時の未来に何を妄想したか」ということなのです。そして、歴史学とは、その妄想を収集、調査、研究することなのでした。
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