伊丹万作 『戦争責任者の問題』
知り合いからぜひ読みたまえと言われたので、初めて読んでみました。
伊丹万作。言うまでもなく、偉大な映画監督であり、伊丹十三の父であり、大江健三郎の義父です。私にとっては、「手をつなぐ子ら」の脚本を書いた人物としても意識されている。
…だまされたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘ちがいしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。 しかも、だまされたもの必ずしも正しくないことを指摘するだけにとどまらず、私はさらに進んで、「だまされるということ自体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。
うん、たしかに鋭い指摘ですね。
この「だまされていた」という言い訳はたしかに、いろいろなところで聞かれますし、私自身ももしかすると、何度か使ったことがあるかもしれない。先の戦争のことのみならず、日常の失敗についてもこう言って逃げたことがあるかもしれない。
だました側のこともちゃんと書き、状況が一変したとたん、かつての強者を集団で糾弾しはじめる弱者に対する批判も手厳しい。
まさに弱者こそが強者になりつつある現代における「モンスター◯◯」や「なんでも反対派」に読んでいただきたい名文です。
もちろん、「だまされてはいけない」というメッセージとして、現代のあれやこれやに当てはめてみてもいいでしょう。「国民は常に指導者たちの意のままになるものだ。とても単純だ」…ちょうど一昨日ゲーリングの名言を引用したじゃないですか。
皆さんも、こちらでじっくり読んでみてください。
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