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2017.09.10

『新しき土』 原節子主演・アーノルド・ファンク監督作品

 の前紹介した伊丹万作の「戦争責任者の問題」。あれを書いたあと伊丹はすぐにこの世を去りました。
 「だまされる」側を断罪した伊丹、そこには当然自らの愚かさへの反省の気持ちもこめられています。おそらくそうした反省の一つがこの作品でしょう。
 ご存知のように、この作品には、アーノルド・ファンク版と伊丹万作版の二種類のバージョンがあります。もともと共同監督という形でという話だったのですが、二人は大げんかしてしまい、結局別々に編集することに。
 結果として、伊丹版は散々な評価で終わり、伊丹は恥をかくことになりました。また、歴史的に言えば、日独防共協定への道を作り、「戦争責任」の一端を担ったことになってしまった…。
 伊丹にとっては、本当に思い出したくもない作品でしょう。ちなみにその伊丹版、私は未見です。観るのも辛いかも。
 ファンク版も正直大した作品ではないわけですが、なんと言っても16歳の原節子が理屈抜きに素晴らしすぎてたまりません。
 また、無駄にたくさん配置された「日本の名所」たち。貴重な記録ですね。特に様々な富士山のアングルは興味深い。冒頭の荒々しい冬の富士山は富士吉田の富士山ですね。数年後には防共の砦となる富士山です。
 原節子は、この映画の宣伝のため、公開直後に欧米を回ります。その時同行したのが、義兄の熊谷久虎。二人はその外遊の最中に、フランスで川添紫郎と出会います。
 それがのちに、二人を仲小路彰と結びつけるきっかけとなるんですね。
 仲小路彰と原節子の微妙な関係については、こちらこちらに少し書きました。
 この映画が、仲小路彰と原節子を結びつけたと言えます。私にとってはそういう意味で興味深い作品です。戦後、原節子が映画界から姿を消したのちも、仲小路彰は彼女が「細川ガラシャ」を演じることにこだわりました。そして原節子自身もこだわりましたが、結局それは実現しませんでした。
 もう一つ番外編。この映画製作のために来日していたファンク夫妻は、偶然、万平ホテルにおいてリアルに二・二六事件に巻き込まれました。なにか象徴的な感じがしますね。ちなみにその日は仲小路彰36歳の誕生日でした。
 あっそうそう、この映画の結末で、原節子演じる光子が火山の噴火口に飛び込もうとするシーンが、あまりに唐突だし現実味がないという批判がありますが、これって木花咲耶姫の伝説に基づいたものですよね。
 多くの富士山のシーンとともに、いろいろな日本的な過去・現在・未来が象徴されていると感じました。私はこの映画、大した作品ではないけれども、しかし嫌いではありませんね。役者さん、音楽、円谷英二の特撮など、実は見るべきところが多い作品ですし。

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