『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 矢部宏治 (講談社現代新書)
この国を動かす「本当のルール」とは?
北朝鮮がミサイルを発射しました。西日本に配備された迎撃ミサイルをあざ笑うかのようにミサイルは北海道上空を通過して、太平洋に着弾しました。
事前通告はなし。今どき、自国の上空を他国のミサイルが自由に行き来する国なんて、世界中見ても日本以外にはありません。
どこまで馬鹿にされているのかという気もしますが、これを単純に「狂った国」のしわざとするわけにはいきません。
彼らにとっては、日本は日本にして日本にあらず。
日本という島は、アメリカの植民地であり、領土であり、軍事基地である。そういう認識でしょう。
いや、世界中でそういう認識を持っていないのは、当の日本人だけだと言っても、決して言い過ぎではないでしょう。
この本に書かれている「知ってはいけない」ことは、もちろん「知るべき」ことです。正直、半分は私も知っていたことでしたが、半分は全く知らないことでした。知らないことでも、まあ予想の範囲内ということもありますし、予想以上で驚いたこともあります。
いずれにせよ、この本に書かれている「不都合な真実」は、どれも戦後発見されつつある公文書に書かれていることであって、決して陰謀論者の妄想ではありません。
「戦後レジーム」ではなく「朝鮮戦争レジーム」に生きている日本人。なるほど、現状の半島情勢は、停戦中の朝鮮戦争の再開であるとも言えますね。そう、朝鮮戦争は終結してないのですから。
多くの密約があり、日本がその空域のみならず、国民の深層心理の部分まで、アメリカに、いやアメリカ軍に支配されているということは、今までも知られていたことです。
しかし、それと、たとえば憲法9条との関係を、ここまで明快に説明した本はなかったと思います。まさに私にとっては目からウロコでした。
そういう意味では、あまりの闇の深さに暗澹たる気持ちになってしまったのも事実ですが、一方でまた少し違った感想も持ちました。
というのは、私がたまたま最近、仲小路彰が戦後残した文書に触れる機会を持ち得ているからでしょう。まさに、日本の大転換期になった、終戦から朝鮮戦争、そしてサンフランシスコ講和条約のあたりに、仲小路は大量の政策提言文書を残しているのです(それが実際にどの程度影響があったものか、検証の余地が大いにあります)。
仲小路の構想した21世紀日本の未来像(今で言えば現在像)は、「アメリカの力を借りて日本は復興し、未来的な価値において日本は世界に貢献する」というものでした。
つまり、この矢部さんの本に書かれていることはたしかに「事実」ではあるけれども、そのまた裏側、あるいは向こう側には、さらに深淵なる計らいがあるということになります。
私は夢想家ですので、そういった未来的意味、裏の歴史の裏の意味については期待をしたいと感じました。
もう少しわかりやすく言うとですね、たしかに戦後70年に及ぶ、「占領下の戦時体制」は日本自身にとっては、とんでもなく惨めな、それこそ「不都合な真実」でありますが、世界全体、人類全体、地球全体(グローバル)の歴史からすると、大きな意味があるのではないかと思いたいのです。
実際、冷戦体制が終わり、仲小路も恐れた世界大戦の可能性はかなり少なくなっています。テロの脅威という問題はありますが、世界史全体の中で見れば、21世紀はずいぶんと平和な時代だと言えます。
こうした世界史の進展、進化に、戦後日本の果たした役割は大きかったのではないか。それこそ、身を削って世界に貢献したとも言えるのではないか。そんな気がしたのです。
従米の形は、たしかに外見上は惨めであり、誇りを持てるものではないのかもしれません。それを、無意識にせよ呑み、大きな不満も持たず、いやどちらかと言えば幸福に平和に発展を遂げてきた日本。そんな国のあり方は、本当に恥ずかしいものなのでしょうか。
そうした国のあり方、日本人のあり方を、ある意味支えてきたのは天皇です。戦勝国アメリカさえもが一目置いた存在、天皇。その天皇が、日本やアメリカや世界に何を期待したのか。逆に、日本やアメリカや世界が天皇に何を期待したのか。
そのあたりについては、それこそ仲小路彰が詳しく述べてくれています。
そう、仲小路とその周辺グループ(高松宮含む)は、この本の主役とも言えるマッカーサーやダレスと、非常に親密に意見交換をしていた形跡があるんですよね。そこにもある種の密約があったかもしれません。
それらが21世紀人に知られるところとなり、未来的な日本の存在価値と、そこにつながってきた過去的事実の意味が明らかになる時も近いのかもしれません。
その日のためにも、まずはこの本に書かれている「不都合な真実」を知っておく必要があるかもしれませんね。
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