パーセル 『グラウンド上の3声のファンタジア』
今日は某オケにエキストラ参戦。基本ヴィオラでしたが、ヴァイオリンを弾く曲もあったので、5弦ヴァイオリンを持っていってすませました。隣で弾いていた知り合いも同じことを考えて5弦ヴァイオリンを持ってきていたので、二人で弦が10本という珍しい状況に(ま、誰も気がついてませんでしたが)。
バロック音楽では、特に楽器が指定されていないこともあり、音域さえ合えば、ヴァイオリンでもヴィオラでも、あるいはヴィオールでも、場合によっては管楽器でも何でもOKということがあります。
たとえば今日紹介するパーセルのグラウンドも、いちおうヴァイオリンが最適な音域だとは思いますが、当時の手稿譜を見ると、特に楽器の指定はありません。
それにしても、この曲、スコアロールを見ながら聴いていただければ分かるとおり、いかにもパーセルっぽく、「普通ではない」ことがたくさん起きていますよね。2小節目の2拍目でgisとgがぶつかっていますが、そのようなことが他のところでも出てきます。
もちろんこれは上行、下行の音型内の経過音ですから、和声学的にはギリギリセーフになるわけですけれども、しかし、実際聴けば分かるとおり、やはり不自然な妙ちくりんな響きになっています。当然、パーセルはそれを意図したわけですね。
パーセルのこうした室内楽や合唱曲の、特にポリフォニックな曲には、こういうことがしょっちゅう起きていて、私たちシロウトが演奏すると、「間違った」と思われてしまうことがありますし、弾いている方も不安になったりします。
この曲も、何度も「?」と思わせるところがあって、シロウトの駄作とか失敗作とかと紙一重とも言える。しかし、何かが違うんですね。シロウトともプロとも。
何度も書いているとおり、パーセルは超天才でしたから、私たちの感性とはちょっと違ったセンスを持っているんです。もし長生きしていたら、ぜったい音楽史は変わっていましたね。天才は早逝する(パーセルは36歳で亡くなっています)。
ところで、3本のヴァイオリンと通奏低音の曲といえば、あまりに有名なパッヘルベルのカノン(とジーグ)がありますね。あれも客観的に見ると変な曲です。編成も変ですし、カノンとジーグだけ独立しているのも変。当時のカノンとしても様式的に変で、似た作品は見当たりません。なんなんでしょうね。
ほかにもパーセルやシュメルツァーに同編成の名曲があります。それはまたいつか紹介したいと思います。
今日はとにかくパーセルの天才(変態)的な音楽をご堪能くださいませ。
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