『治安維持法』 中澤俊輔 (中公新書)
改正組織犯罪処罰法が成立しました。
私も単純には喜べない立場を取っていますが、しかし、一方で野党や人権派、リベラル派、さらにはマスコミが使う「共謀罪法」、「テロ等準備罪法」が成立したという不正確な言い方はやめてもらいたいと思います。
ひどいものになると、「現代の治安維持法が強行採決によって成立!」などととんでもないことを言う。印象操作とかの以前に、勉強不足を露呈していて見苦しい。
私は、戦前の出口王仁三郎や仲小路彰の動きを調べているので、自然と治安維持法にも興味を持ってきました。多少はリアルな当時の現場の様子を知っている者としては、今回の改正組織犯罪処罰法と戦前の治安維持法とは、似て非なるものであるとの実感がありました。
ちょうどそんなモヤモヤを抱いていたところに、先月末ですか、この本の著者、秋田大学の中澤俊輔さんが、テロ等準備罪が「現代の治安維持法」と言われることへの大きな違和感…何が似ていて、何が違うのかという文章をネットで発表しました。
皆さんにもぜひ読んでいただきたいですね。治安維持法が暴走したのは事実ですが、それを暴走させた「主体」がなんであったかを知ると、それがそのまま現代でも単純に繰り返されるかどうか、ある程度はっきり分かると思います。
それ以上に、今回と同じく、治安維持法も生まれるべき理由があったことも理解すべきです。治安維持法がなかったら、どうなっていたかという想像力も必要でしょう。
もちろん、その「暴走」の歴史は否定できませんし、今後私たちが特定の法律を暴走させる可能性がないとは言えません。しかし、だからこそ、そうした過ち(あえてそう言います)の歴史を感情的ではなく、相対的に、そして総体的に捉える必要があるでしょう。
そうした高い大きな視点からのより正しい知識を身につけるために、中澤さんのこの本は必読書です。
とりあえず反対派の方々、また真剣に不安を抱いている方にこそ、お読みいただきたいと思います。
本当によくまとまっています。私たちの「治安維持法」に対する知識がいかに浅いものか、よくわかりますよ。
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