バッハの無伴奏チェロ組曲@『真夏の夜のジャズ』
隣のおじいちゃん先生が、高校生の時映画館で観て衝撃を受けたという「真夏の夜のジャズ」。そのDVDをお借りいたしました。
実は私は初めて観ました。うん、たしかにあの当時の日本の高校生にとっては、いろんな意味でショックでしょうね。ニューポート・ジャズ・フェスティバルは1958年開催。このドキュメンタリー映画が日本で公開されたのは1960年でしょうか。私は生まれていません。
セロニアス・モンクをはじめ、チャック・ベリーやルイ・アームストロングなど、往年の名プレイヤーの演奏の間に、当時の風景や人びとの営みが挟まれ、いかにも日本とは違う、違いすぎるアメリカの香りが漂ってきます。
そんな中で、私が一番感動したのは、28分すぎからのバッハの無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードです。
ジャズの中に挿入された静謐なバッハ。その映像とともにこの映画の中で特異な時空を形成しています。
演奏しているのは、チコ・ハミルトン・クインテットのベーシスト、ネイサン・ガーシュマンだとのこと。
いや、普通にチェリストとしてすごいじゃないですか。いいバッハですね。途中、タバコに火をつけるために演奏を中断するところがカッコイイ。
なるほど、たしかにこの時代、ジャズとバッハは案外近い関係にあったかもしれない。相補関係ともいえるし、相似関係ともいえる。
映画として、出色の名シーンです。編集の妙。当時のドキュメンタリー映画って、こういう方向で芸術性を追究していましたよね。私、けっこう好きです、こういう、世界の再構成。
人間の記憶というかイメージに近い。すなわち、脳にとってのリアルということです。夢に近いと言ってもいい。科学的事実(コト)とは違う真実。ジャズやバッハなど、音楽はその先にある「モノ」です。古い日本語「もののね」とは、そういう意味でしょう。
うん、なるほど。だから「真夏の夜の夢」ならぬ「真夏の夜のジャズ」なんですね。
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