能役者 野村四郎 「遥かなり芸の道」
昨日までの「昭和11年」つながりもあって、この動画を紹介いたします。この動画にもちょっと登場している、四郎先生の弟子、私の教え子でもある女流能楽師からの紹介してもらいました。
人間国宝の能楽師野村四郎先生は昭和11年のお生まれです。
戦前戦中の動乱期に少年時代を送り、そのためでしょうか、狂言師の家に生まれながら、人間の影の部分を表現する能に惹かれていったと言います。
そして、稽古の話も興味深いですね。鉄拳つきの厳しいスパルタよりも、「芸は盗め」の何も教えてくれない稽古の方がずっと厳しかったと。これこそ日本文化の真髄であり、私の言うところの「コト」より「モノ」。言葉よりも実体験というのにもつながるでしょう。
「今に見ておれ!」これは今の日本の若者に足りないものですね。今日も職員室で話したんですよ。本当にそういう「悔しさをバネに」みたいなのがないなあと。
ある部活で高校生に顧問が怒って「もういい、来るな」と言ったら、本当に次の日から来なくなる…こういうことは本当に日常的にありますし、場合によっては親でさえ、そういう子どもたちの反応に賛同してしまう。昔じゃ考えられませんよ。
極端な話、昔だったら私も「死にたい」という生徒がいたら、「おお、死ねるもんなら今ここで死んでみろ!」と言っちゃいましたが(笑)、今だったらとても笑い事になりません。新聞ネタですよ。
言葉って、その表面的な意味だけでなく、その裏側に人の心を包み込んでいるものじゃないですか。こちらがそれを包んで発したつもりでも、相手はそれを全く「忖度」せず、表面的な意味で反応してしまう。日本人の劣化ですよ。
師匠なのに何も教えてくれないなんていうのも、ある意味めちゃくちゃブラックじゃないですか(笑)。そういう世界はこれからどうなっていくのでしょうね。
杉並の大宮八幡宮での薪能、私も何回か拝見しました(こちら参照)。四郎先生のおっしゃる通り、その役者がその場、空気、自然と一体化し、本当に素晴らしい時空間を作り上げていました。意味が分かる、分からないではなくて、「感じる」。これもまた「コト」よりも「モノ」ということでしょう。
世阿弥が行ったように、能の本質は「ものまね」。「モノ」を招くということですね。
そして、最後の次世代へのメッセージ。私も心に深く刻ませていただきました。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 不動明王の愛の荒魂(2023.11.28)
- 日本酒だけで生きることは可能なのか?!(2023.11.26)
- NHK「音楽の広場」タモリとスポーツテーマ曲(2023.11.25)
- 全日本プロレス 世界最強タッグ決定リーグ戦 沼津大会(2023.11.23)
- Re:Hackshun【目せまゆき&成田山幽輔】安倍さんは、あの解散をどう考える?(チョコレートプラネット チャンネル)(2023.11.21)
「歴史・宗教」カテゴリの記事
- 『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて』 魔夜峰央原作・武内英樹監督作品(2023.11.29)
- 不動明王の愛の荒魂(2023.11.28)
- 資源大国日本?(2023.11.27)
- Re:Hackshun【目せまゆき&成田山幽輔】安倍さんは、あの解散をどう考える?(チョコレートプラネット チャンネル)(2023.11.21)
- 「六角堂」 紫雲山頂法寺(京都)(2023.11.19)
「モノ・コト論」カテゴリの記事
- Re:Hackshun【目せまゆき&成田山幽輔】安倍さんは、あの解散をどう考える?(チョコレートプラネット チャンネル)(2023.11.21)
- 在原業平の墓(滋賀県高島市マキノ町在原)(2023.11.18)
- 廣松渉の「世界の共同主観的存在構造」(2023.10.25)
- 映画『君たちはどう生きるか』 宮崎 駿 監督作品(2023.08.22)
- 『顕神の夢〜霊性の表現者 超越的なもののおとずれ』 足利市立美術館(2023.08.15)
コメント