アンナー・ビルスマ 『バッハ 無伴奏チェロ組曲』
先日紹介した『バッハ・古楽・チェロ アンナー・ビルスマは語る』、バッハ演奏家(の端くれ)としては、本当にたまらない内容ですね。実際に演奏しながらビルスマの言葉にいちいち納得しています。もちろん私は5弦ヴィオラ(ガット弦@モダン楽器)で演奏しております(笑)。
さて、その本の中でも紹介されていたビルスマの韓国でのライヴ動画。たしかにこうして聴く&観ると、実に自由な解釈ですね。
若い頃のビルスマは、組曲が舞曲であることにこだわった風もありましたが、そうした立場とは明らかに違う境地に達していることが分かります。
それにしても、このボウイング(アップ&ダウン)は古楽人からすると、ある意味ショックですよね。私には無理です(笑)。特にヴィオラだとすると本当の意味でアップとダウン、すなわち引力に抗うか従うかの力学的違いが明確になりますので。
最近は私もチェロをよく弾きますが、たしかにチェロだとあまりアップとダウンにこだわらなくても、同じような表現ができますね。
結局のところ、モダン・ヴァイオリンやヴィオラの奏法というのは、そうした引力と私たちとの物理的関係性を感じさせない、すなわち「均質」な音が出るような方向に発達したということですね。
私としては、やはり「歌」や「語り」が楽器の基本だと思いますので、ビルスマもこの本で語っていた「呼吸」、すなわち吸うエネルギーと吐くエネルギーによる「波動」が大事だと思いますので、やはり運弓にはこだわりたいと思いますね。
私がこの動画のようなビルスマの演奏をテレビで観た時、そうしたことを無視したボウイングだと思ったので、大変ショックを受けた覚えがあります。
しかし、この本を読んで、それは私のようなシロウトの次元とは全く違うところでの「選択」、それも必然的選択であったことが分かりました。いやはや、これだから古楽は面白い。
そして、ガット弦の表現力の豊かさ、これは素晴らしすぎますね。やっぱり私はガット派だなあ。
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