『宇宙人東京に現わる』 島耕二監督作品
北朝鮮が核実験をしました。それなりの技術力を獲得しているということですね。この時代になって、これほど近くに核の脅威があるというのは、これはたしかに異常事態です。
そんなニュースを聞きながら、ふと思い出したのがこの映画。1956年(昭和31年)公開の、日本初の本格カラー空想特撮映画。
テーマはずばり「原子力の平和利用」。しかし、結末は大いに矛盾のあるものになってしまっています。唯一の被爆国である日本の苦悩が、ある意味未来的に描かれている作品です。
この映画に出てくる宇宙人は、その筋では有名なパイラ人。かの岡本太郎デザインと言われていますが、本当なのでしょうか(岡本太郎は「色彩指導」としてクレジットされている)。
まあ、岡本太郎的なデザインとも言えるし、一方であまりに安易でチープなデザインとも言える。もちろんだからこそ「カワイイ」のですが(笑)。
パイラ人も核戦争を体験し、そして反省して原子力を平和利用することになったという歴史を持っています。そして、「宇宙道徳」に従って、地球の危機を救おうとします。つまり、「いい宇宙人」。
ネタバレしてしまうと、結果として日本人は、核保有国の協力を得て、地球を滅亡に追い込む強大な「敵」を攻撃することになります。しかし、それが効果なしと分かると、原水爆を超えた兵器をパイラ人とともに作り、結果として「敵」を粉砕してめでたしめでたしとなる…。
これって「平和利用」なんでしょうかね。もちろん、その矛盾をテーマにしたのでしょう。
戦後10年が経ち、敗戦、被爆という過去の現実を肯定する、いや忘れるために、この時代はとにかく「原子力の平和利用」が謳われました。もちろんそこから原子力発電という未来が生まれていくわけですね。
たとえばこの時代に日本の裏面で活躍していた仲小路彰も、原子力こそ未来を切り開く「光」であると力説していました。もちろん、彼はすでに「核分裂」ではなく「核融合」こそが、その「光」の本体であると考えていたわけで、のちの原子力発電とは一線を画しますが。
このたびの北朝鮮の脅威をこの映画に無理やり重ねるとすると、そういう地球を破壊するような「敵」に対しては、各国が核兵器をもって粉砕していいということになりますよね。
極論とは言え、この映画の時代性からすると、それもまた「平和利用」の一部となるということでしょうか。極論すぎますかね。
その他、高度経済成長が始まらんとする頃の日本の風景をいろいろ見ることができて、なかなか面白い映画です。
マニアックな視点で私が「お〜」と思ったのは、奥田宗宏とブルー・スカイ楽団の演奏のシーンがけっこう長くあるところです。
先日、奥田宗宏さんの息子さんである奥田英人さんのライヴに行きました。あの頃から60年が経ち、日本の音楽事情、ジャズ事情、ビッグバンド事情も大きく変わった中で、奥田英人さんがザ・ブルースカイオーケストラを存続しているのは立派なことだと思います。
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