『亀岡の大予言者―東洋の巨人・出口王仁三郎の世界』 加藤正民 (たま出版)
古本屋で購入。一気に読み終えました。これはいい本ですね。
王仁三郎本はとにかくたくさんあります。中にはやや「大袈裟」なものもありますが、この本はちょうどいい感じ。
出版は1982年ですから、70年代オカルトブームが下火となった頃。私は18歳。王仁三郎に出会っていませんでしたね。もう少しして大学生になって富士北麓に住み、宮下文書に出会って王仁三郎の名を初めて知りました。
著者は、王仁三郎についての評価と、この本の執筆動機について、後半部で次のように書いています。
…王仁三郎という人物が、ただの新宗教創始者などと異なる、偉大な洞察力をそなえた具眼の士であったたかを認識しうると思う。ただし、いま引例した王仁三郎の軍備や戦争が、地主や資本家を守るためのものというふうな表現部分だけを取り上げて、当時の新しい社会思想との関連性のみ強調し、そこに王仁三郎の進歩性を賞讃するというふうな安っぽい考え方が近ごろの大本を取り上げる人たちの共通の視点になっているが、わたくしはそういう見方に組みしない(原文ママ)。
王仁三郎の体制批判的発言を、当時における宗教人の立場から断言したその明確な事実は事実として認識しておくのに吝かではないが、そういうことだけが王仁三郎の偉大さのすべてではない。彼の偉大さはもっと別のところにある。王仁三郎にかぎらないが、人間としての偉大さというものは、必ずしも近代性の有無にあるのではない。
わたくしが出口王仁三郎や大本一統の業績について、この本を書こうとするゆえんも、ただ当時の宗教の中で大本が進歩性があったとか、反体制・反権力的であったとかいうだけのことに起因するのではないのだ。
こんにち、大本を書く人たちが、ほとんどそうした視点を発想の唯一の基盤としているわけだが、それにあきたりない思いを持つところから、わたくしはこの本を書く発心をした次第である。したがって、進歩的知識人に類する人たちが大本のシンパ面をしてきたのとは別の立場、すなわち、そうした人たちの誰もが触れなかった大本の心霊的視野から、いまこれを書いているのである。また、出口王仁三郎という人物に対しても、その辺の配慮を怠ったならば、ほとんど気狂いとしか映らないであろう。
なるほど、左翼的な発想からの評価も多かったわけですね。時代が時代だったわけですから。
今はどちらかと言うと、反対側から評価されることの多い王仁三郎。つまり、両翼を持ち備え、そのバランスによってより高く飛翔した存在だったということでしょう。
ところで、面白かったのは、この古本、前の所有者が鉛筆で線を引いている箇所があるんですが、それが見事私が線を引きたいところと一致しているんです。まるで時空を超えて未来の私が読んでいたかのよう(笑)。
そんなことをあり得ると思わせるほど、濃厚な霊的世界が描かれています。協力が出口和明さんということで、最近たとえば和明さんの息子さんが書かれた「切紙神示と共に甦る孝明天皇の遺勅(予言) 誰も知らなかった日本史 皇室に隠された重大な真実」という本に出てくる話題も登場します。
この本でAとBと表現される、体主霊従と霊主体従の戦いは、今まさに大峠を迎えています(当時も、また王仁三郎存命中も「今が大峠」と思っていたわけですが)。はたして世界はどうなっていくのでしょうか。
王仁三郎に興味のある方は、ぜひこの本を古本で手に入れてほしいと思います。バランスの取れた良き入門書ですよ。
Amazon 亀岡の大予言者―東洋の巨人・出口王仁三郎の世界
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