仲小路彰 『絹の道について』
今日は「絹」に関して、またまた嬉しい大進展がありました。先日の 私たち(安倍昭恵さん、宮下織物さん、山口家)の妄想が、こんなにすぐに実現の端緒につくとは…恐るべき天の計らいであります。
そんな私たちの未来的妄想には、様々なベースとなる歴史的事実があり、歴史的な人物がいるわけですが、やはりここのところの動きには、この富士北麓に縁が深く、また絹に対する本質的な理解者であった、天才歴史哲学者(思想家)仲小路彰の見えない力を感じます。
今日は、その仲小路彰が「絹」について書いた文章を紹介します。仲小路彰の文章はなかなか世に出ないのですが、これは私が古本屋で見つけた何冊かの「地球との対話シリーズ」の一つ、第53号「絹の道を求めて」の序文です。
これが書かれたのは昭和30年。このあと、東京オリンピック開催が決まり、それに伴って、高輪の光輪閣に「シルク・ギャラリー」が設けられたことは、先日書いたとおりです。
そうした流れの原点になった文章であり、私たちはこれを半世紀後の現代に甦らせたいと考えているのです。
ぜひお読み下さい。
「絹の道について」 地球文化研究所(仲小路彰)
日本の伝統は絹の上におりなされ、つぎ伝えられている。絹のように美しく、たゆるなく結ばれている。この伝統を、将来にも、より豊かにつぎ伝えることこそ「絹の道」の志向する目標である。
「絹の道」は、かっての紀元前二世紀における東西文化の交易路としての「絹の道」が有したと同じく、二つの意味を持つものである。
一つは、直接的な東西文化交流の主要交易品としての絹ーそしてこのことは対外貿易の主要産業の一つとしての絹を、今後日本がいかに発展させるかという、日本経済の問題に通ずる。
一つは、絹によって象徴される日本文化の国際文化との交流、発展への広義の効果ならびにその間接的促進である。
前者が経済的実質的効果を求めることに対し、後者は文化的、精神的効果を発揮し、しかもこの両者が互に別れることなく、相互に影響しつゝ、より有機的な発展をなさしめるところに、今後の具体的方途が示されるものである。
それは、かつての「シルク・ロード」が、単に絹だけを運んだ交易路ではなく、より広い東西文化の交流の意義をもったことに対比され、しかも「シルク・ロード」は、ただに文化の消長のみならず、それをめぐる諸民族の幾多の興亡変転の歴史をも包合していたことを歴史的にも深く考うべきである。
そこには東洋の特産物としての高価な絹がラクダの背に、幾多の劇的な旅中の挿話を残しつつ、はるばる西方に運ばれ、その高度の物質的掲載価値を示すとともに、広く東洋の芸術的優秀さがヨーロッパ文化に多大の影響を与え、同時に西域の文化を東方に伝えることに役立ったのである。その貴重な実証を今日日本においては、なお法隆寺、正倉院御物の世界に比類ない文化的伝統のうちに見出し得るのである。
「絹の道」を通じて絹だけが運ばれたのではない。それはあらゆる文化の交流路であった。同じく「絹の道」も、今後の国際文化交流の中核として、その内面的充実と発展がなされるべきである。
そして「絹の道」はあくまでも「道」として、東洋のもつ高い精神の原理を伝統的につぎ伝えゆくものであることを銘記すべきであろう。
日本の歴史を上代以来つらぬき通してきた絹の深い伝統は、つねに日本文化の中心となり絹によって織りなされた高い生活と文化の諧調をあらわし来った。それは「絹の国」として、あらゆる生活が絹に結ばれ、養蚕にいそしむ農村のかくれた労苦に、また糸を紡ぐ工場の人々の勤労によってうけつがれ、伝えられてきた伝統の美しさのうちに、今後もなお、外面的に近代的設備の利用、拡充を図ることは当然としても、その内なる魂の純粋なる伝統を、いかにつぎ伝えてゆくかーこゝに「絹の道」の大きな使命がある。
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