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2016.07.19

帯分数の読み方…「か」か「と」か…そして「か」とは?

20160720_140615 校生に国語を教えていて、なぜか数学の話になり、「帯分数って中学以降全然使わないね」という話になりました。
 そこから派生して、帯分数の読み方の話題になりました。当然今どきの高校生は、小学校時代、たとえば右のような分数を「13分の2」と読んできています。
 皆さんはいかがですか?私(もうすぐ52歳)より上の世代の方の中には、「13分の2」と読む方もいらっしゃるでしょう。
 そう、ちょうど私が小学生の時は、「と」「か」両方の読みが混在していた記憶があるんです。教える人によって違ったりしていた。親は「か」だけれども、先生は「と」とか。先生の中でも分かれていたかもしれません。
 これはいったいどういうことなのでしょう。ここはちゃんと調べたわけではありませんが、おそらく昭和40年代の指導要領改定によって、「か」→「と」になったと思われます。
 そうした大人側の事情については、算数教育史の問題なので、ぜひどなたか調べてみてください。
 ところで、今日生徒と「何だろ?」となったのは、その古い読み方である「か」はいったい何者かということです。「と」なら分かる。英語でも and と表現されるので、単純に助詞の「と」でしょう。
 しかし、「か」は分からん。まさか or じゃあるまい。意味が通じませんよね。
 …と、ここからは国語のセンセイ、それも国語学を修めた者として、じっとしていられなくなります(笑)。「か」の正体を解明したくなるわけですよ。
 ネットでちょろっと調べればすぐに答が見つかる時代ではありますが、これについてはどうもよく分からない。では、自分で調べようということで、まずは古い文献に当りました。いつものとおり国立国会図書館デジタルライブラリーのお世話になりましょう。
 そうしたら、まあ面白い事実にぶち当たりました(短時間の探索なのでテキトーですが)。
 まず、明治期の教科書や指導書のようなものを参照します。「帯分数」とか、「帯分数 読ミ方」などで検索しますと、ちゃんと出てきます。
 ランダムに引っ張り出してみましょう。まずは、かなり古い資料。
 明治25年の「新編算術教科書. 上」です。

20160720_133821

 おっとこれは「と」と読ませている。なるほど。古くは「と」なのか。では「か」とはなんぞや。
 次。明治45年の「小学校算術講義. 第2編(尋常第6学年用)」

20160720_133449

20160720_171518 おっ、「と」とも「個」とも読むとな。「個」か。これがどうも「か」らしいぞよ。「個」を「か」と読む、すなわち「箇」と通ずるというのは、たとえば大正3年の次の文献をご覧ください。かの徳富蘇峰の「山水随縁記」。
 ちなみにですね、「ヶ」も「一ヶ所」のように「か」と読みますよね。これはカタカナの「ケ」ではありません。「个」という漢字の変形です。「个」は「箇」の略字です。
 なんだか、「か」「け」「こ」…と、いろいろ入り組んでいますね。
 さてさて、次の資料は、大正6年の「小学算術書に関する教師の注意」。

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 これも「と」と「個」になっています。すなわち「と」と「か」ですね。このあたりで、すでに両方の読み方があったようです。
 では、いつ「か」が優勢になって、そしていつそれが逆転されて「と」に統一されたのか。これはどうも戦後の話のようです。それについては、上に「算数教育史の問題」と書きましたとおり、別の方におまかせします。いや、いつか近いうちに調べて書きましょうかね。
 いずれにせよ、「と」と「か」は長く併用されていた。「か」は「個(箇)」であるということが分かりました。
 ここからは蛇足。いろいろ調べていて、もっと混乱しているものがあったので、いちおう記しておきます。
 今で言うところの「帯分数」ですが、戦前には「混分数」「混数」と呼ばれていた時期もあるようです。それどころか、明治の初期には、今で言う「仮分数」を「混分数」と称しているものもあり、外来の学問をいかに訳すかに腐心し、またある程度言葉が固定するまでにずいぶんと混乱や不統一があったようです。
 そういう訳語の歴史としてとらえると、ようやく「and」が「と」に統一されたとも考えられますね。

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