『宗教消滅ー資本主義は宗教と心中する』 島田裕巳 (SB新書)
昨日の「誰かに見られている…サムシング・グレート」に大きく関連するお話。
今や多作家として有名な(?)島田裕巳さんの著書。タイトルから想像した内容とは少し違いましたが、なかなか面白い本でした。
私は、「宗教消滅」を、基本的に島田さんと違う意味でとらえています。資本主義との関係についても。
島田さんの論については本を読んでもらうとして、ここでは私の考え方を記しておきます。
この本で示されているとおり、日本の新宗教を中心とする各宗派の信徒数は激減しています。あるいはヨーロッパの非キリスト教化、世界の無神論化もたしかに進んでいます。
その「宗教消滅」ははたして悪いことなのでしょうか。島田さんの論調は「心中する」という過激な言い方からも分かるとおり、どちらかと言うと人類にとってマイナスの事象として捉えている感じです。
ここで私がまず思い出すのは、出口王仁三郎の「宗教のない世がみろくの世」という考え方です。王仁三郎らしいですね。宗教家でありながら、宗教がなくなれば良いと思っている。
そういう意味においては、現在の日本や世界の状況は良い方向に進んでいるとも言えます。特に日本は、昨日書いたように、もともと「宗教」はなく、生活実感であり、無意識的意識であり、あえて言うなら、自然や自然現象に仮託される「なにモノか」に対する畏敬の念だけが存在していました。
日本人にとって、「宗教」はあくまで近代的方便。それ以前は、天皇がその象徴であったわけですけれども、今日はそこのところには触れません。
そう考えると、日本は本来の日本に帰りつつあるとも言えますし、世界もある意味日本化しているとも言えますね。
経済、特に資本主義経済、あるいはグローバル経済というものについても、私はちょっと変わった考えをしています。
マルクスが喝破したとおり、資本の目的は蓄積にあります。それは人間の欲望の究極の象徴です。それを乗り越えたところに共産主義があるわけで、その意味では、共産主義の方が「倫理的」あるいは「宗教的」には次元が高いというのも事実です。
ですから、私は共産主義にもシンパシーを抱きますし、そういう理想を未来に掲げて今の経済的自我を見直すことも大切だと常々思っています。
ただ、現実のシステムとしては共産主義は資本主義に負けました。少なくともそう見えます。
しかし、それは私の言う「国譲り理論」にもつながることでして、実際はまた共産主義が勃興する時が来ます(かなり遠くの未来でしょうけれど)。
島田さん言うところの「高度資本主義」は、そういう意味では「宗教」を滅ぼすかもしれませんね。心中かもしれない。つまり、我々の霊性が高くなれば、宗教もいらなくなるし、資本主義的な経済システムはいらなくなる。それがすなわちみろくの世であると、王仁三郎は言っているわけです。全然悪いことではありませんよね。
王仁三郎が出てきたついでに、この本に出てきた教団や人についていくつか書いておきます。
まずは生長の家。この本でも言及されていますが、現在の生長の家は、谷口雅春が創始したころのそれとは、正直180度違う路線を歩んでいます。
そう、今や、山梨県北杜市の山奥の森に国際本部を置く、実に自然派な(左翼的なと言ってもいい)教団になっています。
これも前述の意味で、大いにけっこう、大いに象徴的なことです。一方で、「日本会議の研究」に示されているとおり、その反動としての谷口雅春回帰の運動が起きるのも世の常。
三代目の現総裁が『日本会議の研究』についてや『日本会議の研究』について (2)のように高く評価しているのは、実に面白いことです。
次に、私もこの本で初めてその名を知った「ヽ心会(ちゅしんかい)」。勉強不足でした。このヽ心会、「ヽ」を「す」の古代の発音「ちゅ」と読んでいることからも分かるとおり、間接的にであれ、出口王仁三郎の影響があったのは間違いありません。
ヽ心会の開祖は姓名学の権威熊崎健翁。熊崎健翁については、かの仲小路彰が大きな影響を受けたことで、私の記憶にある人物でした。
仲小路は、自身の名前の標記を熊崎の説に従い「明良」と改めました。また、身近な弟子や友人の改名も促しています。
私も熊崎について勉強してたいと思います。ネット上でこのような論文を読むことができます。実に興味深いですね。
さあ、またまた脱線してしまったので、話を戻しましょう…と言いますか、私のトンデモ説よりも、島田さんの論の方が面白いし分かりやすいと思いますので、ぜひご一読を。
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