「怒り」の本質
昨日の続きかもしれません。反知性主義とも大きく関わっているかなあ、「怒り」。
そう言えば、慶応大の小林節さんが「国民怒りの声」なる政治団体を立ち上げましたね。節さんの節操なき変節にびっくりいたしました(笑)。まあ、個人の思想信条は変化してしかるべきですので、特に怒りは湧いてきませんが。
さて、その「怒り」ですが、これは不思議な感情です。何年か前に「怒り=生かり」という記事を書きましたっけ。語源に触れながら「怒り」は生きる力を生み出す原動力であるというような話になりました。
たしかに、なんちゃってサヨクにせよ、ネトウヨにせよ、やたら怒っている。それが生き甲斐なのでしょう。なんでも反対したり、汚い言葉で相手を攻撃したり。
まあ、たしかに生きる力になっているのかもしれませんね。そんな怒りを否定、禁止しちゃったら、日常のストレスで死んでしまう人も出るかも。
最近で言うと、ヘイトスピーチとか不謹慎狩りというのも、なんだか妙な「怒り」が原動力になっていますよね。ヘイトスピーチは単なるストレス解消として解釈することもできます。しかし、不謹慎狩りに伴う怒りの感情は微妙ですね。
私は基本的に、「怒り」とは「自分と似たモノを相手の中に見た時に起こる感情の一つ」だと考えています。えっ?ですよね(笑)。
もちろん、自分と相手が似ていて嬉しいこともあります。共感、共鳴です。
しかし、場合によっては、その共感、共鳴が怒りにつながることもある。ちょっと分かりにくいでしょうかね。
一番分かりやすいのは、たとえば教師である私が、宿題をやってこなかった生徒に怒りをおぼえたとしましょう。あるいは、反抗的な態度をとった生徒に対して。これは実は、私の中にも宿題をやってこない可能性のある自分、すなわち宿題なんかやりたくない(仕事したくない…笑)自分がいたり、センセイの言うことなんか聞きたくない自分、すなわちセンセイが大した人間ではなく権威を振り回しているだけだという自覚があるからこそ沸き起こる感情です。
おいおい、お前、正直になるなよ!ホントのこと言い出すなよ!的な(笑)。
相手の嫌な所は、実は自分の嫌な所だというような言い方って昔からありますよね。これはたしかに一理ある。親子のケンカなんかも、似ているからこそ発生する。
こんな場合はどうでしょうね。戦争法案反対!と叫んでいる人を観察してみましょう。その人の心に「戦争法案」という概念があるから、戦争法案なんかではない普通の安保法案に対して怒りが湧いてくるわけです。これは似ているというより、その人の心の中に「戦争」の種があるから発生する怒りだと解釈しています。
だからと言ってはなんですが、彼らは「正義」の名の下に非常に攻撃的です。その態度、人を平気で呼び捨てにしたり、「死ね!」とか言っちゃう心にこそ、戦争の種があると思ってしまうのです。
不謹慎狩りの場合はどうでしょうか。これには「嫉妬」の感情も絡んでいます。「ホントはオレだって不倫もしたいし、被災地に何百万円も寄付したいし、公用車で温泉とか行きたい」という気持ちがあるのに、それが叶わない、叶えられる立場にないために、それが怒りとして発動してしまう。これもまた、自分に種があって、屈折した共感、共鳴が嫉妬の怒りになっていると考えられます。自分は我慢してるのにずるい!というヤツ(笑)。
ヤツと書いて思い出しましたが、「怒」って「奴」の「心」って書きますよね。「奴」は女のマタではなくて、「又」は「手」の意味でして、つまり女性を捕らえて奴隷とするという、なんだか物騒な文字なのです。
そうした立場の人の心、特に虐げられた女性の感情ですから、権威、権力に対する反抗心、嫉妬心が怒りの素であることが分かりますね。
というわけで、自分の「怒り」についても、こういう視点で見つめなおしてみることにします。人に対して怒る前に、まず自分を省みなければ。
最後に、論語の一節をどうぞ。孔子が弟子の顔回に対して言った言葉は深い。
「怒りを遷(うつ)さず、過ちを貳(ふたた)びせず」
怒りを遷さないってそういう意味だったのか。
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