『常識から疑え! 山川日本史 近現代史編』 倉山満 (ヒカルランド)
歴史はいずれにしても物語です。たとえば山川の日本史教科書もある立場から語られた物語ですし、倉山さんのこの本の内容もまた、倉山さんの語る物語であります。
それら無数の物語をどれが正しいかなどというのは、これは判断できないものです。はっきり言ってしまえば、どの物語を選択するかは、その人の好みであって、また、その好みさえも常に変わり得るモノなのです。
それを世間では「歴史認識」と言ったりします。
たとえば私の歴史認識もずいぶん変わってきました。ものすごく簡単に言ってしまうと、左からだんだん右に移動してきて、現在はけっこうバランスよく中庸な位置にいると思います。
私の場合は、それが左右だけでなくて、たとえば偽史と言われる世界観もある程度よく知っているつもりですし、また、ある意味ほとんど誰も知らないであろう、仲小路彰の高次元歴史観についても今まさに研究中でありますから、そうですね、上下の面でもかなりバランスよい「認識」を持っている方だと思います。ま、かなり特殊だということですね。
そういう歴史観が構築される基礎となったのが、実は「山川の日本史」だったのです。私は大学入試(共通一次)で日本史を選択しましたから、まさに山川日本史を丸暗記しようとしたタイプでした。
倉山さんが言うとおり、その物語は実に面白くなかった。無味乾燥で、物語というのも憚られるほどに単なるデータの羅列に感じられました。
実は、そこが原点なんですよね。面白くなかったからこそ、その後自分の物語を創作したくてしかたなくなった。歴史認識構築の原動力は、山川のつまらなさにあったわけです。
過去の事象は、言うまでもなく、その時代に生きた生身の人間の感情が交錯して紡がれてきたわけで、それが無味乾燥なわけないだろうという信念。それが暴走してしまって、ある時は非常に左翼的な知識に憧れた時もありましたし、いわゆる自虐史観に耽溺するような時期もありました。
富士山麓に住んでからは、宮下文書なるトンデモ文献にすっかりはまってしまい、またさらにそこから出口王仁三郎の「霊界物語」なる異次元の「歴史」にも触れることになりました。
そして、最近では、天才歴史哲学者仲小路彰という存在と出会い、そんなトンデモすらも排除せずに併呑しつつ、実際の近現代史を動かしていた、おそるべき物語に触れることになりました。
というわけで、倉山さんのこの本は正直「常識から疑え!」基礎編ですよ(笑)。いや、私、基礎編をちゃんとやらないでいきなり超応用編に行ってしまったクチなので、今さらながらこうして基礎編を勉強させていただいているわけです。
基礎編だからでしょうか、やや倉山さんの口調が過激すぎるようにも思えますけれども、まあそのくらいやらないと、山川の本来の機能である「原動力」は有効化しないのかもしれませんね。そこも含めて、基礎編としては非常に面白い読み物(物語)であると思います。
ところで、歴史について語るということは命がけですよね。倉山さんもお体ご大切に。
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