ステキのテキはなぜ「敵」なのか
なんだかとっても忙しいので、今日は軽めに。
中二の娘が「ステキ」ってどういう漢字だっけときいてきたので、「元素の素に敵の敵」と言ったら、「テキのテキ?」と聞き返されました。そりゃそうだ。えっと…「敵をやっつける」の「敵」だよ。
と自分で言ってみて、気がつきました。なんで、「敵」なんだろう。全然ステキじゃない字ですよね。
さっそく調べてみましたら、なるほど、「素敵」は当て字なんですね。語源的には「素的」と書くほうが良い。
つまり、語源的には「素晴らしい的」の略ではないかということです。実は、語源についてははっきりしないようなんですがね。
用例を見てみますと、19世紀初頭の式亭三馬の滑稽本「浮世風呂」や「浮世床」に「すてきに」とか「すてきな」という形容動詞として初登場しているようです。
ということは、この時代に江戸の流行語として流布し始めたと考えて良さそうです。「素晴らしい的」というのは実に変な感じがしますが、江戸時代から明治時代にかけて、芸者さんを「唱的」と言ったりする中国語の影響から、隠語で「〜的」(〜系の人という意味)が使われたことを考慮しますと、「素晴らしい人」を「素的」と言ったというのもあり得る話です。
流行語ですから、語源を感じさせず、ある意味オシャレに「すてき」とか「ステキ」と仮名書きすることあって当然でしょう。今でも「ステキ」と書きたくなりますよね。軽みを加えたい。
明治以降になって、江戸の流行語であった「すてき」がその本来の語源や用法を離れて定着してきたところから、再び漢字化が進んだと思われます。実際、明治期には、「素的」「素敵」「素適」など、いろいろなパターンがあります。そのうち、昭和になったころには、現在の「素敵」が有力になってきました。
ちなみに「的」と「敵」は古くから混同されてきました。「敵(かたき)」と「的(まと)」が狙うべき、射止めるべき対象としてイメージが重なったからでしょうか。enemyの意味で「的」という漢字を使っている例を多数見つけることができます。
何気なく使ってきた言葉、漢字でありますが、こうして調べてみますと、面白い歴史がある(私の勝手な説ですが)ことが分かりますね。
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