岡崎体育 『MUSIC VIDEO』
昨日とは打って変わって…いやいや、考えてみますと冨田勲さんはテレビの仕事が多かった。テレビ番組のテーマ曲やBGMというのは、基本映像とともに享受されるわけで、そういう意味では、「MUSIC VIDEO」のはしりであったとも言えそうです。
たとえば昨日紹介した冨田勲さんの3作品など、それぞれ「情景」が浮かぶじゃないですか。その番組を観ていなくとも。クラシックにおける「描写音楽」の例を挙げるまでもなく、音楽と「情景」というのは、そのように有機的に結びついているはずのものです。
そういう意味で、この岡崎体育さんの「MUSIC VIDEO」の「MUSIC VIDEO」は、80年代のMTV以来逆転してしまった音楽と映像の関係を揶揄しているようで面白い。映像が先になってしまったり、映像がないとダメな音楽になってしまったり…。
こういうふうに「あるある」になってきた過程を遡ってみるのも面白いかもしれませんね。たしかに「とりあえず」感のあるPVが増えたような気もしますし、もし自分がそれっぽいものを作ろうとすれば、やはりこれらにかなり近い形になると思われます(笑)。
いずれにせよ、岡崎体育さんの目の付け所と、音楽、映像の微妙なレベルやセンスがお見事です。
最後の最後までやられたって感じですよね(笑)。これ、たとえばライヴやテレビ番組の収録なんかの時はどうするんでしょう。
そう、MTV後のミュージックビデオ文化って、すなわちライヴ(生)文化の否定の一面もあったわけですし、逆にライヴ(生)を引き立たせる役割をしたとも言える。
私は、以前書いたように、音楽には映像(見た目)が伴うべき、つまり「録音文化」は音楽史においては邪道であったと考える立場なので、決してミュージックビデオに対して批判的ではないんです。逆に興味深く見守っているわけですね。
しかし、一方で、みんなが「あるある」と思ってしまうような定型化、硬直化してしまったのもまた事実であります。
こうして岡崎さんにそこんとこを指摘されちゃって、クリエーターさんたちはやりにくくなってしまいましたね(笑)。いや、いい刺激になったか。
ところで、岡崎体育さん、下手物(失礼!)かと思ったら、ちゃんと正統的な楽曲も作ってますね。いろいろ聴きましたが、私は次の「鴨川等間隔」が好きです。ちょっと志村正彦風じゃないですか、メロディーも歌詞も歌の表現も。
純粋にいい曲ですよ。そして、この「MUSIC VIDEO」もなかなかいい感じ。プロがお金と時間とスタッフを駆使すればするほど、こういう作品は作れなくなってしまう、そういうパラドックスが心地よいのであります。
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