『お定恨み節』 戸川昌子
戸川昌子さんがお亡くなりになりました。
息子のNEROさんとともに、昭和のキャバレー文化を現在まで守ってきた女神の昇天。残念でなりません。
昭和のキャバレー文化は、サロン文化と平行しつつ、時々互いに交わりながら、時代を紡いできました。
退廃的な優雅さ、ゴージャスなチープさと言った、人間の表裏を、酒と煙草と女を表象にして、表現し続けてきた…そんな昭和の物語が遠い神話の世界になってしまいました。
多くの昭和の男たちが、戸川昌子の女の魔性に絡め取られ、小説や音楽や芝居といった「子」を生み続けました。そういう男に子を生ませる女もいなくなっちゃいましたよね。
私は戸川さんの文章や音楽にそれほど触れてきた人間ではありませんが、この「お定恨み節」は忘れられませんね。
初めて聴いたのは、大学の時。受験に敗れた負け犬が、田舎の文学部という格好の場所を与えられ、そう、時代はもう軽くて薄っぺらなバブルに向かおうかという時、昭和の残滓にすがることによって、せめて世間に流されまいと抵抗したのでしょうね。妙に気分にぴったりだった記憶があります。
この曲、言うまでもなく、題材は「阿部定」です。歌詞を読めば分かりますよね。
1975年発表のアルバム「インモラル物語」に収録されています。このアルバム、この曲だけでなく全体にかなり過激。猥雑なパワーに満ちあふれています。
よく分かりませんが、おそらく前年にフランスで製作公開された過激な(ある意味古代的な)変態映画「インモラル物語」にインスパイアされたのでしょう。
というか、フランス(舞台は東欧)に負けないぞ、日本はもっと変態だぞ、という意気込みで作られたような気がしますね、このアルバム。すごい時代でした。
最近では、息子さんのNEROさんが、お母様のお仕事をしっかり継いで、素晴らしい活動をなさっているとのこと。ロックからシャンソンへ。ぜひ頑張ってもらいたいものです。
紀元節の二人のトークがすごい。赤塚不二夫さんも神ですよね。
NEROさんの歌声もどうぞ。
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