愛國号(第74号)「山梨」
古い文献をいろいろ調べています。面白かったのは、昭和8年発行の「山梨県師範学校」の「県下に於ける美事善行調査」。
この時代は面白いですね。戦争に向かっていく感じが本当に手に取るようにわかります。よく今の日本が戦前のそれに似ているという人がいますが、明らかに違いますよ。
たとえばこの調査は、山梨県内の各地区の子どもたちが、立派な大人や団体のことを報告するという形を取っているんですが、その「立派な」というのは、多くが愛国的な精神、報国的な行動と同義になっています。
まあ、その細かい内容は実際に読んでいただくとして、一つ、ある地区の「美事善行」を読んでいたところ、こういう箇所がありました。
「非常時に当り青年団に於ては愛国機献納金の募集に熱中し早く愛国機山梨号の出現を希望して居る次第であります」
「愛国機」とはなんぞや。私は知らなかったのですが、30年代から40年代にかけて一般市民や非軍需企業などが献金し、それを元手に製造された航空機が陸軍に献納されていたんですね。ちなみに海軍は「報国号」。
上の報国は昭和7年にされたものです。結果、早くも昭和8年の4月に献納されました。報国した少年の夢はすぐに実現したわけですね。山梨県民全ての献金によって完成したので「山梨」と名付けれました。
「愛国号山梨」は、陸軍初めての単葉戦闘機である九一式戦闘機です。献納された愛国号は全部で6000とも7000とも言われています。すごい盛り上がりですよね。
ちなみに朝日新聞社は「軍用機献納運動」を展開し、全国民からの献金を集めて、「全日本号」を陸海軍150機ずつ全300機献納しています。今では考えられませんね(笑)。
「愛国機山梨号」ははたして、その後どのような運命を辿ったのか…今のところ分かりません。
いずれにせよ、今とは教育界も世の中もだいぶ違う雰囲気ですね。
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