『大世界史 現代を生きぬく最強の教科書』 池上彰・佐藤優 (文春新書)
非常に恥ずかしい話なのですが、私は実は歴史にかなり疎い人間です。なんとなく偉そうに歴史に関することをこのブログにも書き散らしてきましたが、実際は一般の方よりも歴史に対する知識、あるいは興味は薄っぺらい。
これはこれまでの人生においてもコンプレックスでありました。高校時代、世界史の授業は本当にチンプンカンプン、全く興味を持てず、しかたないので受験では日本史を取ったのですが、共通一次ではたしか52点くらいしか取れなかった(笑)。
一方で、そうしたコンプレックスによるカウンター攻撃なのか、いわゆる偽史や陰謀論にはまった時期もありました。
そして、今。この歳になってようやく教養としての世界史や日本史を学ぼうという、ある種純粋な意欲が湧いてきました。いや、必要に迫られているとも言えるかもしれません。
というのは、偽史や陰謀論までをも軽く包摂する、まさに「超世界史」を我が物にしていた、歴史哲学者の仲小路彰に関わるようになったからです。
そう、「超世界史」にすんなり入っていけたのは、もしかすると、偽史や陰謀論、さらには様々な宗教の歴史観に触れてきたからかもしれません。今思えば、遠回りをしてよかった。
そうした外堀的な知識と、それらに対するある種の抵抗力が、たとえばこの本の「大世界史」の内容の受容においても、しっかりプラスに働いていると感じました。
かっこよく言えば、歴史という記述(コト)の裏側にある「モノ」も含めて、非常に巨視的に、しかしまたその雛型としての個人的な人間感情というものをも想像しながら学ぶことができるとういことです。
この本でお二人が反発している「反知性主義」や「行き過ぎた実用主義」も、ある意味では歴史の一部であります。もちろん陰謀論や偽史も、それが存在している、そして少なからぬ影響を与えているという意味では歴史の一側面です。
そういう観点からすると、お二人が重要視する「教養」「リベラルアーツ」は、もしかすると実証主義的な歴史学よりも、文学的な物語に近いのかもしれません。
仲小路彰が歴史研究(過去の物語の再構成)を盛んに試みていた戦前には、日本の学問の世界にもそうしたある種の自由さがあったんですよね。もちろん、そこから戦争という未来の歴史も構成されていったわけですが、それすらも巨大な物語の中では、決して誤った歴史ではなく、必然的なものであったというのが面白い。
この本でも近未来の予測のような物語が出てきます。はたしてそれが実現するのか、それとも全く違う物語がどこかで生まれるのか。実は日本と日本人がその鍵を握っていると思っている私であります…って、結局、そういう中二病的歴史観から脱していないんだよなあ(苦笑)。
ま、それはともかくとして、とても楽しく読むことができた本です。目からうろこというのはこういうことを言うのでしょうかね。こういうふうに現代、あるいは近未来と結びつけた過去の歴史の学習なら、いくらでもできそう。
なるほど世界史Aの教科書がいいんですね。そして、青木の実況中継、さらには受験サプリか。全部身近にあるので、さっそく勉強しなおしてみます。
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