『昭和の怪物 裏も表も芸能界』 なべおさみ (講談社)
これも面白かった。一昨年読んだ『やくざと芸能と–私の愛した日本人–』も相当ぶっ飛んでましたが、こちらもすごい。単なる自慢話ではないですよ。伝統的な「物語」の生まれる瞬間を見ているような、そんな感じ。
逆に言えば、そういう視点で見ないと、つまり「歴史学」的視点で見てしまうと、なんともイタい本になってしまうかもしれませんね。
本当のような嘘、嘘のような本当…この虚実皮膜の間に物語は生まれます。そして、その嘘や脚色も含めて「真実」なのであるというのが、私の「昔」に対する変わらぬスタンスです。
それは、この本にも出てくる、芸能界、スポーツ界、やくざ世界、スピリチュアル世界、宗教界、さらには偽史世界に対して私がずっと興味を持ってきたことからも分かっていただけるのでは。
この本のテーマは「ケ」と「ハレ」。そして、「本物」「ニセ物」「エセ物」。面白いですね。まさに「本当」と「嘘」、「現実」と「夢」の間を行き来しています。
そういう「物語」として実に興味深い内容が満載でした。特に心に残っているのは、次の四つでしょうか。
森繁久彌さんが降ろした「神様」の話、落合博満さんの「臨戦態勢」、王貞治さんに対するなべさんの「手当て」療法、そして、ある意味この本のクライマックスと言える「ハイジャック事件の真実」。
「手当て」で王さんのガンを治すあたりは、昨日の記事、石井常造の「生気自強療法」と完全につながる世界ですよね。
もちろん今でもそういう世界はちゃんとあります(先日もそういう方とお会いしました)が、こういう「民間療法」はそれこそ昔からずっとあって、それを体系化していったのが、明治、大正期の皆さんなのです。そういう意味で、なべさんは伝統の正統継承者ということになりますよね。
まあ、とにかく面白い本です。嫌いな方もいらっしゃるでしょうが、私はなべさんの文体も好きですね。まさに「語り」。懐かしい。
ふと、秋田の長老たちの「語り」を思い出しました(こちら参照)。
Amazon 昭和の怪物 裏も表も芸能界
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