『日本のいちばん長い日』 原田眞人監督作品
レンタルが始まりましたので、先日Amazonビデオで観ました。
結論から言いますと、単独の映画としては充分に魅力的な作品に仕上がっていると思いました。
しかし、どうしてもですね、旧作と比べてしまうじゃないですか。そうしますと、やはり旧作の方がいいとなってしまいます。それも圧倒的に。
その理由は昨年8月に旧作(岡本喜八監督)を観た時のこちらにほとんど書かれていますね。歴史との距離です。これはどうしようもない。
前半はいいなと思ったんです。ああ、旧作とは全く違う視点で描かれているが、これもいいなと。心理描写も細やかだなと。特に不安だった(旧作ではあえて登場しなかった)昭和天皇の本木雅弘さんが意外にもすんなり受け入れられた。
しかし、後半になって事件が切迫してくると、急にがっかりさせられてしまった。なんでだろうと思うと、なんとも「軽い」のですね、その切迫感が。
カットが細かいのもありますが、それ以上に役者のセリフが早すぎる。聞き取れない。重みがない。
おそらく演出としてそういう手法を取ったのでしょう。切迫感を言葉で表そうとした。おそらくですが。
旧作では、逆に「間」が緊張感を生んでいる。これは表現の時代差なのかもしれない。そして、それが先ほど書いた「歴史との距離」そのものだとも思うわけです。
私は旧世代の人間なのでしょうか。やはり違和感を抱いた。残念な気持ちになりました。
まあ、そうした表現のことは置いて、内容については再びいろいろ考えさせられましたね。
特に、ポツダム宣言受諾の御聖断において、なぜ昭和天皇は「国体の護持に確信を持っている」と言えたのか。ここは歴史の謎とされる部分でもあります。
ここには実は仲小路彰が関わっております。戦後発表された「我等斯ク信ズ」の内容は、すでに鈴木貫太郎内閣発足時から、政府、大本営、そして天皇に奏上されていたと思われます。
仲小路は終戦後、米ソの対立が深まり、日本がその間において復興することを予言しています。そこには、当然、反共、防共の砦としての日本という立場が想定されており、だからこそアメリカは天皇制をなくしたいがなくせないことになるとの予想がありました。
そして、歴史はその通りに動いていったわけです。
こうした裏面の歴史も、次第に遠くなっていきます。今こそそれを掘り起こす時だと考え、今年はいろいろと動こうかと思っている次第です。
そうしたきっかけを与えてくれたという意味では、この「新作」も私にとっては大きな力を持った作品だと言えそうですね。
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