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2016.01.16

2016 センター試験国語(その1)

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 年もやってまいりましたセンター試験。もうほとんど恒例になっておりますので、今回もまた軽く論評してみたいと思います…というか、まあ今年の国語の問題はすごかった〜!
 どういう意味ですごかったか…まずいちおう教員として先にこっちを言っておこう…ようやくワタクシの主張が取り入れられて(?)まともな問題になったなという驚きと感動。
 つまり、ようやく勉強した甲斐がある問題になったということ。今までの私の主張は昨年の記事からたどってください。
 特に古文が「まとも」な難易度になってくれたことには感謝です。「本文読まないで解け」と教えていた私としては、逆にまずいなと思ったほどです。
 平均点は高くなってしまいますが、センターの姿勢が変わったことは、ある意味センター試験の歴史上画期的なことであって、受験生にとっては良かったと思います。
 まあ、問題はこの傾向が続くのかということです。揺り戻しのようなことが起きて、また一昨年のような問題が出たりするのが今までのパターンでしたから。
 さてさて、もう一つの「すごかった」は、もうネットなどでご存知の方もいらっしゃることでしょう、そう第1問の評論がぶっ飛んでいたのです。いや、問題としては実にやさしい(優しい&易しい)ものでしたよ。いい問題と言っていいでしょう。
 問題は問いではなくて本文。というか「注」。上の画像をクリックしてみてください。
 リカちゃん、ミニーマウス、ポストペット…このへんは古典的なキャラ&懐かしいキャラですね。そしてそして、まさかのセンター試験に「やおい」の文字が!ww
 その解説がまたすごい!
「原作における男性同士の絆に注目し、その関係性を読みかえたり書きかえたりしたものなどを「やおい」と呼ぶことがある」
 う〜ん、これは名文ですね(笑)。
 本文に「やおい」という文字が出てきた時点で、その道の高校生たちはかなり動揺したことでしょう。そして、あえて「注」なんか見なくてもその意味を熟知しているにもかかわらず、もちろん「注」を見ないではいられなかったことでしょう。
 そしてそしてその「注」が上記のごとくあったわけであって、その際の試験会場の「脳波」は大きく波打ったに違いありません(ちなみに…BL文化については、たとえば10年くらい前にこちらに書いたように、伝統的な貴族文化であると捉えていますから、私は特に抵抗はない)。
 「絆」…この言葉は新鮮でしたね。しかし、なるほど、これは正しいかもしれない。彼女らの「読みかえ」「書きかえ」(あるいは「描きかえ」)の条件として、たしかに「絆」は必要です。というか、「注」にあるとおり、「絆」がデフォルメされてかの関係性の表現になると。
 ちょっとした発見でしたね。国語の問題における「本文」というのは、案外一期一会の邂逅であったりするものです。出題者たるもの、解答者にそういう発見や出会いを提供するくらいの思い入れをもって作問してほしい。
 そういう意味で、今回のセンター試験国語評論のメッセージ性は実に高かったと言っていいでしょう。
 おっと、そんなふうにまとめている場合ではなかった。まだあった。
 注の9、メイド・カフェです。「やおい」でかなりのダメージ(感動)を受けたであろう受験生たちは、この注の掉尾に配備された最終兵器の前に憤死(悶死)を免れぬ状況になったことでしょう。
 では、その道の人ではない受験生の脳波は波静かであったかというと、そうとも言い切れません。おそらくは全くそうした道に興味がなくとも、興味がないだけに、その尋常ならざる受験会場の「空気」にきっと動揺させられたことでしょう。
 やばいと思ったかもしれませんね。自分は不利だと。その時ほど、普段自分が蔑んでいた、教室のすみで静かなる興奮の笑顔を付きあわせている「異世界の住人」たちをうらやんだことはなかったことでしょう。
 そんなわけで、この第1問、非常に公正な問題だったと思います(笑)。だいたいどんな国語の問題も、そのトピックによって多少の、いやかなりの不公平が生じるのですが、ことこのサブカルチャーに関しては、すでに「サブ」ではないほどの現代的存在感を持っているので、結果としてそこの住人のみならず、その補集合たる「一般人」にまで、同程度に大きな振幅の動揺を与えたのです。
 おっと長くなりそうなので、まじめな(?)論評はまた明日以降にします。

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