2016 センター試験国語(その2)
さてさて、今年のセンター試験国語について、まじめに論評しようと思いましたが、あまりにもまともな問題でして、珍しく「吠える」べき部分がありません。
いや、これでいいのだと思います。今年は満点が出ておかしくない試験でした。それが普通ですよね(国語のセンセイ方は当然満点取れるでしょう…)。
あえて言えば「適当でないもの」を選ぶ問いがたくさんあったことが特徴的だったでしょうか。まさか引っかかった人はいないと思いますがね(中学生だとよく引っかかる)。
古文の最後の問題がちょっと分かりにくかったかもしれませんね。そういう声をいくつか聞きました。たしかに、六角堂の観音が、男が牛飼いについていくように命じたのは、験者の心経を男に聞かせる目的だったというのは、本文から読み取りにくい。
この場合は「まあ、そういう解釈もできるな」という許容範囲ととらえて(実際私は△をつけました)、他の選択肢の傷(つまり×)と比較する、つまり消去法でたどりつくことはできるかと思います。結果として、「なるほどそういうことだったのか」と、問いの選択肢にストーリーの仕組みを教えられるというパターンでしたね。
ところで、全然どうでもいいことなんですが…もしかするとこんなこと気になったのはワタクシだけかもしれません…第1問の本文にいくつかルビ(ふりがな)がついていますよね。揺籃(ようらん)とか欺瞞(ぎまん)とか騙(だま)すとかだったら、まあ分かりますが、6段落に「表(あら)わされる」と出できた時には、えっ?と思ってしまいました。
「表わす」はさすがに読めるだろうと。ですよねえ。
もしかして「表す」が正式(一般的)なのであえて読みをふったのかなと、一瞬思いかけましたが、いやどちらかというと「表す」と書くと「ひょうす」と読む可能性があるので、その場合にはあえて「あらわす」であることを表わすべきではないかと…。
実際のところは、おそらくこういうことだと思います。「表」は小学校3年生で習う漢字です。小学校でこの漢字の訓読みを教える際には、「表す」という送り仮名で教えることになっています。実際には「表わす」も許容される送り仮名なのですが、学校では「表す」で教えるのが普通なのです。
センター試験もあくまで教育現場で行われるものですから(あっ、ちなみに「おこなう」も「行う」が正式、「行なう」が許容される形です。「行った」と書いた時、「いった」なのか「おこなった」なのか分からないからですね)、こうした不自然なルビが振られたのではないかと思います。
ついでに書きますと、「表れる」は「あらわれる」と読みますよね。こちらも「表われる」でもいいと書いた辞書などがあります。
実は実は送り仮名以前に、本来「表」を「あらわれる」と訓読みすることはできないのです。近代に至るまで、「あらわれる(あらはる)」に「表」の漢字を当てた例が見当たらないのです。
「顕」「露」「現」「見」「形」「彰」「著」などの例は残っているし、古辞書にも出てくるのですが(「あらはす」に表を当てたものはたくさんあります)。
謎といえば謎ですね。今では「隠れていたものが表面に出てくる」という意味で「表れる」はよく使われるんですけどね(私ももちろん使います)。
ちなみにgoogle日本語入力ですと、「表す」「表わす」「表れる」は出ますが、「表われる」は出ません。「現われる」や「顕われる」はあるんですが。謎は深まるばかり。
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