『白魚』 熊谷久虎監督・原節子主演作品
昨日の続きです。原節子さんの女優人生において、大きな暗い影を落としているのが、この映画です。
監督は昨日紹介した熊谷久虎。実は、この、仲小路彰と深い関係のあった熊谷久虎監督は、原節子の義理のお兄さんでした。つまり、原節子のお姉さんのダンナさんだったのです。
そして、原節子の実のお兄さん会田吉男は映画カメラマンでした。この3人が集ったこの映画で悲劇は起きました。
昭和16年に「指導物語」を監督した熊谷久虎は、その後、仲小路彰との活動に専念するため一旦監督業を休業します。
戦後、12年ぶりにメガホンを握ったのが、この「白魚」です。この映画、富士山が重要な存在として描かれているのですが、その富士山麓のロケ中に悲劇が起きました。
御殿場駅にて、構内と汽車を借りきっての撮影中、カメラのセットをしていた会田吉男と助手が汽車にはねられたのです。それが7月10日。会田は翌11日に亡くなりました。
原節子は大変なショックを受けます。それはそうですよね。
この事故がその後の原節子の女優人生に暗い影を落としたのは間違いありません。小津の作品におけるある種の「影」も、実はこのような実生活での悲しい出来事の現れかもしれません。
兄の死後も気丈に撮影をを続けた熊谷久虎と原節子。作品は完成し、8月5日に公開されました。
当時、仲小路彰は山中湖に蟄居していました。仲小路彰、富士山、原節子…この因縁(暗号)に興味が俄然湧いてきました。まず、この「白魚」を観なければ…ですね。
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コメント
この撮影は、円谷英二的に考えれば非常に愚かな撮り方でした。レールの上に45度で鏡を置き、遠くから望遠レンズで撮れば起きなかった事故なのです。
戦時中に右翼になっていた熊谷には、そんな考えはなく実写して起こした事故だったのです。
投稿: さすらい日乗 | 2019.02.21 10:08
この原節子と熊谷久虎には、不愉快な話があり、原は熊谷にものにされていたというのです。義理の兄にやられていたわけです。東宝の藤本真澄が晩年に明かしていたと白坂与志夫の本に書かれています。
原節子主演の映画『新しき土』の欧州での公開に際して、熊谷はなにも関係ないのに原節子に付いて行ったのですから、よく考えると異常です。
戦時中に熊谷は、狂信的な者になってしまい、戦後はまともに監督はできなくなります。
投稿: さすらい日乗 | 2019.03.02 08:26