The Covers 『フジファブリック』 (NHK BSプレミアム)
今日のCoversはフジファブリック。竹内まりや「純愛ラプソディ」と小沢健二の「ぼくらが旅に出る理由」をカバー。選曲はどういうわけかそんなに意外な感じがしませんでした。
妙にしっくり来たのは、彼らのアレンジが絶妙だったからでしょうか。カバーって難しい。コピーすると違いが余計目立つし、自分らしさを出しすぎると大概痛いことになってしまう。そういうものです。
そういう意味で、「純愛ラプソディ」は男性ボーカルになる分、あまり気負わず自然でノーマルなアレンジ、そして、「ぼくらが…」では、思い切ったフジ風アレンジにしたのが功を奏したと感じましたね。
いや、この番組ってアーティストにとっては楽しみでありながら、かなり緊張する酷な番組でもあります。今まで、そのバランスとやらを誤ってしまった例を何度か聴きましたから。
それはそうと、個人的には二つの大きな感慨を覚えました。
一つはプロフィールにもどこにも「志村正彦」の名前が出てこなかったこと。いや、それは予想していたことでもありましたが、実際に志村くんの声は流れても、名前が出てこないことには、さすがに感じるものがありましたね。
もう充分に彼らはそこから立ち上がって、そして歩み始めているとは知りながら、やはり「フジファブリック」というバンド名が生きている限り、私たちの特別な思いも生き続けます。
ですから、正直に言うと、ショックだった反面、なるほどと納得してしまうところもあり、とても複雑な気持ちになりました。思い出迷子にはなりたくないけれど、でも、やはり忘れたくない思い出というのはあります。
それと大いに関係しますが、総くんのボーカルの上達ぶり、いや、もう上手くなったとかいう次元ではなく、ボーカリストとして実に魅力的になったなという感動もありました。
志村くんの突然の不在が、総くんに課した試練は、とんでもなく大きかったはずです。なにしろ「天才」の後を継がねばならなかったわけですから。
上手い下手で言えば、志村くんはあまり上手いボーカリストではなかったけれど、彼が発する言葉には不思議な力、重みがありました。
それにはもちろん、作詞作曲能力という要因もありましたが、実はそれに加えてあの独特の歌が重要なファクターになっていたのです。
いわば、その三層のプレッシャーを、総くんは引き受けたのですから、それはそれは大変だったことでしょう。
たまたま知り合いが、そんな総くんの影の努力を知る人で、その方からいろいろと話を聞いていたので、本当に今日の演奏(歌)には、グッとくるものがありました。
もちろん、テクニック的にも上達していますが、それ以上に、彼らしさ、今のフジファブリックらしさが存分に現れており、ある意味では志村くんの影も薄くなって当然だなと、それこそちょっと複雑な思いではありますが、しかし、納得せざるをえないというか…。
特に、新曲の「夜明け前」は素晴らしかった。作詞、作曲、編曲、演奏、そして「歌」。純粋にとてもレベルが高かった。どこに出しても恥ずかしくない。きっと志村くんも「すごい!」と言ってくれるだろう。そんなふうに感じました。
今のフジファブリックが進化すればするほど、また、志村くんの楽曲も輝きを増してくる。そういう意味では、今のフジファブリックにも、私たちにも、やはり志村くんは生き続けているわけですね。名前が出て来ずとも。
あさって発売になる「GIRLS」、とても楽しみです。
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