『哲学の謎』 野矢茂樹 (講談社現代新書)
哲学者というのは憧れの職業ですね。いや、職業と言っていいのかな。哲学で食っていけたらいいなということでしょうか。
なんていうのは、凡人のそれこそ勝手な妄想であり、実際の哲学者はけっこう苦しい生活をしています。苦しいというのは、お金がないというのもありますが、やはりものを考え続けることは辛い。
そんなわけで、おそらく現代には本物の哲学者というのは、そんなにいないと思います。philosophyは、今では細分化してしまったという事情もあります。昔の哲学者は、今では科学者や宗教家や芸術家や教育者になってしまって、つまり、スケールダウンしてしまっているとも言えますね。
日本においては、西田幾多郎、和辻哲郎、鈴木大拙、そして仲小路彰…壮大なスケールはここら辺まででしょうか。
そんな中、野矢茂樹さんの存在は、私にとってはそれなりに大きいと言って良い。なぜなら、そうした壮大なスケールの古典的哲学を、私たちに平易に語ってくれるからです。
この本はその最たるもの。認識、存在、時間…それらを私たちの生活感の中で語ってくれている。
凡人が哲学者を気取るにはちょうどいい易しさです。そう、難しいことを易しく言うことはとても難しい(この表現、ちょっと哲学的?)。
その難しさと易しさ、懐疑と納得、思考と現実といった、二項対立的な世界の切り分け方…それがすなわち哲学の入り口でもあるわけですが…の象徴として、この本は「対談形式」で書かれています。
それも、なんというか、両方とも「自分」というか、決して対立だけでは終わらない、終わりたくない、そんな謎の「二人」による会話。
それが、私たち凡人にもある種の思考実験体験を与えてくれるわけです。だから、ちょっとした哲学者気分を味わえる。気分を味わえることが、哲学の入り口になっているし、その入り口に立っている自分が案外に楽しく気持ちいいのが、すなわち「哲学の謎」たる部分であると、私は感じました。
私は、「モノ・コト論」と「時間は未来から過去へと流れている」という究極の哲学(?)で世の中を見ています。非常に単純なのですが、なかなか他人には理解してもらえません。おそらくは地球上の哲学ではないのでしょう(笑)。
一般性、普遍性がなければ、もちろん地球上では哲学とは言えませんから、実際はエル・クソターレの単なる妄想なんでしょう。
いや、私もこういう対談形式で書いてみようかな。そこから哲学が湧き上がってくるかもしれない。うん、いつかやってみよう。
Amazon 哲学の謎
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