めっきり
めっきり秋らしくなりましたね…と言ってみて、ん?「めっきり」ってなんだろうと思いました。
この文脈なら、「すっかり」と同義という気がしますが、どうなんでしょうか。
というわけで、調べてみますと…なるほどこの「めっきり」は「めきめき」と同源なんですね。「めきめきと上達する」なんて言う時の「めきめき」です。
つまり、「はっきり」したイメージですね。明らかにという感じ。
もともと、「めきめき」とか「めっきり」というのは擬態語(擬音語という説も)でして、たとえば地震で家がきしむような様子、すなわち木の板などに力がかかって変形する様子を、「めきめき言う」とか「めっきり割れる」とか表現したようです。
そうした目に見えないエネルギーによって、目に見える明らかな変化が見られることを「めき」という音で表したと考えると、「めっきり秋らしくなりましたね」に隠されたニュアンスというのが感じ取れるようになります。「すっかり」とは、やっぱり違いますね。
「めっきり大人っぽくなった」とか、「めきめき上達した」などという人間の成長、変化にも、目に見えない時間の力が関わっていますね。もちろん「めっきり老けた」なんていうのもそうです。
「めっきり(と)」はマイナスイメージ、「めきめき」はプラスイメージとする辞書もあるようですが、「めっきり」はプラス、マイナス両方に使われますよね。だいたい「秋らしくなる」ことはマイナスではありませんし。
この「めき」という音列が持つニュアンスや、それに対する感情には、「もののあはれ」が大きく関わっているように感じます。ちなみに私の「もののあはれ」観は一般的なものとは違うので、「もののあはれ=苦諦」の記事をご参照くださいませ。
つまり、日本人の古来の世界観、人生観、宗教観、自然観が、「めっきり」という言葉にも表れているということです。案外深い言葉なのですね。
あっそうそう、「〜めく」の「めく」とも関係あるかもしれません。「秋めいてきた」とか言う時の「めく」ですね。面白いですね。
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