戦争は文化だ
安保法案、与野党の攻防も佳境に入って参りました。
私はこのたびの安保法案の必要性は充分に分かっているつもりです。一方で与野党の攻防のレベルの低さには辟易しますし、国会前の職業市民たちのどんちゃん騒ぎもどうかと思いますし(実際見に行ったのでよく分かります)、メディアの偏向報道も著しいと感じる。
まあ、政治というのは個人の私的レベルを超えた公的なコトを成すのが仕事ですから、市民には反対されてナンボです。そういう意味では、それこそようやく「決められる」政治に戻ったともいえますね。
さて、そんなどんちゃん騒ぎの中、なぜか(笑)石田純一さんが「戦争は文化ではない!」と吠えておりました。
もちろん、これは「不倫は文化だ!」のセルフパロディでありまして、芸能人の自虐ネタとしてはなかなか秀逸でありますが(笑)。
しかし、「戦争は文化ではない」というのは明らかに間違いです。その発想が戦争を起こしてきたと言ってもいい。
石田さんははたして文化をなんだと思っているでしょう。不倫は文化で戦争は文化でないと(笑)。
ワタクシの定義によりますと、「文化」とは「その土地風土のアイデンティティーが人間の活動( 生活)を通じて現れたもの」、「自然のアイデンティティーが人間の営み を通じて現れたもの」。つまり「モノ」が「コト」として語られるとそれが文化なのであります。
地政学が雄弁に物語るように、戦争はその土地風土、自然環境がその大きな原因、要因になっています。食べ物の取り合いが土地の取り合いとなり、国の取り合いになる。
日本は気候風土に恵まれ、食べ物は潤沢にあった。そして、海に囲まれているという、まさに地政学的な好環境にも恵まれ、文化としての戦争はあまり発達しませんでした。
しかし、明治維新以降、世界は国際化し、また交通機関や通信手段の発達により、日本は、古典的な地政学を超えた近代的地政学の中で生きなければならなくなりました。
そして、西洋文化としての「戦争」を取り入れざるを得なくなり、その結果、多くの国際的な戦争に巻き込まれていくことになりました。もちろん、現在もそうした近代的地政学の中に私たちはいます。
戦争反対、安保法制反対、安倍やめろと言う人たちの文化も私にはよく分かるのです。自分にもそういう「古典的」な文化は生きていますから。
それにしても、革新が憲法守れで、保守が憲法改正というパラドックスと同じく、ここでも左派が「古典的」で、右派が「西洋近代的」価値観というのは面白い現象ですね(笑)。
私の尊敬する仲小路彰は、戦前、戦中と「戦争文化研究会」において、世界史上の戦争を研究しつくしていました。平和という文化を成し遂げるためには、戦争という文化を知らねばならないという信念のもと。
私も全く同じ観点を持っているのですが、戦争学や戦争史あるいは戦争文化を研究していますと言うと、本当に誤解されます。
戦争文化の視点においてこのたびの安保法案を読むと、その意義や問題点が浮かび上がってきます。法案すら読まず、ただただ反対だ賛成だと叫んでいる人たちには分からないでしょう(もちろん私も完全に理解しているわけではありませんが)。
石田さんはどうなんでしょうね。不倫は文化、戦争は文化でないということを、論理的に説明してほしい…いやいや、最初からギャグなのだから、そんな無粋なことは言いませんよ(笑)。それより、そんな軽い発言をまじめに取り上げてしまうメディアのセンスを疑いますね。
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