『惨殺―提督斎藤実「二・二六」に死す』 高橋文彦 (光人社)
関東大震災から92年。あの時起きた朝鮮人に対する差別的な噂や暴動、虐殺を、最も苦々しく辛い気持ちで受け止めていたのは、斎藤実ではなかったでしょうか。
ここのところ、二・二六事件や富士高天原復興運動にまつわる不思議な縁で、急速に身近に感じることとなっている斎藤実元首相。
関東大震災が発生した時、斎藤は朝鮮総督でした。その頃、朝鮮における反日抗日運動はかつてよりもかなり沈静化していました。それは、斎藤実総督による融和政策、徳政政治が功を奏してたからです。
斎藤実は穏健で実直。総督就任時には手榴弾を投げつけられるような状況だったのが、その人柄によって朝鮮人の尊敬の対象になっていったと言います。
そんな中起きた関東大震災。朝鮮人暴動説とそれに対する暴行虐殺の知らせを受けた斎藤の心中はどれほど複雑なものだったでしょうか。
岩手の田舎出身の斎藤実が、国際的に活躍する政治家になり、総理大臣になってからは戦争への歩みを遅らせ、帝人事件で退陣したのち、最後は二・二六事件の襲撃対象となり「惨殺」されるという壮大なる物語。この本は、その激動の人生を俯瞰することのできる貴重な資料となっています。
私の個人的な興味は、なぜ、そんな大人物が、山梨県富士山麓の片田舎に眠る古文書の研究会「富士文庫」の顧問になったかということだったのですが、残念ながらこの本にはその答えもヒントもありませんでした。
謎は謎のままです。あえて言うなら、若いころ戦艦「富士」に乗っていたということくらでしょうか。
斎藤が朝鮮総督を務めたのは大正8年から昭和2年まで。宮下文書研究会である財団法人「富士文庫」設立が大正11年。顧問として名を連ねたのが大正13年ですから、本人はほとんど朝鮮にいたことになります。
宮下文書と朝鮮との関係はなかなか微妙なので、ここでは詳しく書きませんが、もしかするとそのルートもあるかもしれませんね。
富士高天原(富士王朝)復活については、まさに志半ばで命を落としてしまった斎藤実。彼の遺志を継ぐかのごとく、この平成の世に不二阿祖山太神宮の復興は本格的になりつつあります。私も故人の霊界からの協力も得ながら、正しい道を歩むお手伝いをしたいと思っています。
Amazon 惨殺―提督斎藤実「二・二六」に死す
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