『日本のいちばん長い日』 岡本喜八監督作品
終戦の日に録画したものですが、ようやく観ることができました。
比較的昭和の邦画をたくさん観てきた自分でありますが、どういうわけかこの作品はこのたびが初見。
観終わった今、今年観てよかったとつくづく感じました。今まで取っておいてあったのだなと。
宮城事件…簡単に「終戦」とか、「戦後」とか言いますが、本当に紙一重だったのだなあと思う反面、たとえ反乱が計画通り行ったとしても、結局は二・二六事件のような後味の悪い結末になっていただろうことは想像に難くありません。
昭和天皇の怒り…日本国にとって実に不幸なことです。怒りを発動する前に、あまりにも多様だった国民の感情を一気に祭り上げた天皇という存在は、やはりすごい。天皇がいなかったら、はたしてどうなっていたのでしょう。
ある意味では、あのように戦争を終わらせたことで、一部の人の言う「責任」を充分に取っているとも言えましょう。
この夏、リメイク版が公開になっていますが、この昭和版を観てからの方がいいかもしれませんね。はたして平成の役者たちが昭和の役者たちを凌駕できるのか。
どちらが史実に近いかというのは難しい問題ですね。時間的な近さという意味もありますから。そう、歴史学の難しさは、「その時」から時間が経てば経つほど新たな情報が増えていくような錯覚があることです。
実際は、時が経つことによって、「その時」からの距離は開いていきます。いくら新情報によって新たな物語が構築されたとしても、「その時」の空気や残り香は明らかに希薄になっていく。その矛盾が難しい。
たとえばこの旧版は、「その時」から22年で公開されています。新板は70年。この約50年の差はあまりにも大きい。
私の少年時代に吸った、あの「戦後」の空気と、今の私が思い出そうする(歴史として認識する)「戦後」とは、やはり大きく違います。どちらにリアリズムがあるかは言うまでもありません。
そういう意味で、こちら岡本版の空気はかなり体感的ですね。役者のほとんどが体験者ですから当然と言えば当然です。
平成版の役者さんたちのプレッシャーはいかほどであったか。それをどういう方法で乗り越えているのか、さっそく来週辺り観にいってみようと思います。
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