『公立 vs 私立』 橘木俊詔 (ベスト新書)
データで訓む「学力」、「お金」、「人間関係」
今日は東京で私立学校の経営研修。
少子化のあおりを受け、企業としての私立学校は危機的状況にあります。というか、一般企業ならとっくに潰れてしまっていることでしょう。
私の勤める学校も、とても楽観的な状況とは言えません。地理的条件など、他校よりも恵まれているかもしれませんが、バブル期のころのお気楽な経営ではとてもやっていけません(当たり前です)。
いや、逆にバブル期に堅実経営をしていたので、基礎体力はけっこうある方だと思いますが、それでも顧客は間違いなく激減してゆき、増加する見込みはほとんどゼロなので、経営をそれなりに戦略的に進めていかなくてはなりません。
今日の研修では、2校の成功例が紹介されましたが、それを聴く数百の参加者は、どちらかというとドンヨリした雰囲気でした。
「ウチで同じことができるだろうか」
「前提条件が違いすぎる」
「やっぱりカリスマ的リーダーが必要だな」
そんな空気がびんびん伝わってきました。私は無謀なほどの楽天家ですし、案外野望を持っている人間なのですが、そんな私でも、やはりふと同じような考えがよぎりました。
私は改革はトップダウンであるべきという信念がありますので、足元の方は別の人にまかせて、国や地域の発展こそが私立繁栄の条件と信じ、あらぬところで突っ走っております(もちろん現場の理解は得られませんが)。
そう、日本の歴史はある意味では私立が支えてきた部分がある。この本では、たとえばノーベル賞受賞者は全員国立大学出身だというようなデータも開陳されていますが、政治や経済の分野での私立大学出身者の貢献度は非常に高い。文化やスポーツでもそうでしょう。
もともと、日本は「寺子屋」「私塾」の伝統の強い国です。どの時代も、私立が公立をリードしてきた。公立が私立の後を追う、真似をするということが多かった。
そのあたりを正しく評価していただき、いわゆる学費の格差をより縮小していただきたい。これは国に働きかけるべきことです。なにしろ、総理大臣も私立大学出身者なんですからね。
もちろんそういう環境の厳しさ、すなわち一般企業同等の競争原理の中で、私立は常に努力し改革し戦ってきたわけですが、さすがにここ数年の少子化の大波は大きすぎます。
あとは経済がもう少し良くなってくれれば、学費という「未来への投資」も盛んになると思います。この本にあるとおり、私立出身者が「元を取る」あるいは「投資以上の収入を得る」可能性は、けっこう高いんですよね。
しかし、貧すれば鈍する、世の中に不景気感が蔓延していると、目の前の損得にしか目が行かなくなってしまうんですね。
しかし、今日の講演にもあったとおり、「靴を履く習慣のない土地で靴を売る」の精神に則り、今まで目の前の損得にとらわれていた目を、未来に向けさせる、そういう今までになかった文化を創りだすというのは、けっこうやりがいのある仕事がもしれません。
ちなみ私自身は、小中高大と見事に公立に通い続けました。この本を読んでびっくりしたんですが、中学から私立に行ったのと比較すると700万円も親孝行したんですね(笑)。
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