『歴史と私』 伊藤隆 (中公新書)
史料と歩んだ歴史家の回想
歴史学界のカリスマ、それもある意味では異端のカリスマとも言える伊藤隆東京大学名誉教授。私が心から尊敬する学者さんです。
私のような、直観と霊感で歴史を読み解いているようなモノ(笑)とは、まさに対極に座す伊藤先生。その、一次資料を重視する実証的学問姿勢は、対極だからこそ私を魅了します。
最近では、こちらに紹介した「評伝 笹川良一」にすっかりやられました。
その記事にも書いてあるとおり、冷徹なまでのその筆致によって、「事実」がロマンやドラマ、ファンタジーにまで昇華していく、その不思議な感覚を味わわせていただきました。
実は、そんな伊藤先生に、私、この春電凸しちゃったんです(笑)。いきなりお電話してしまった。まったく失礼なヤツです。しかし、伊藤先生、お忙しいのにも関わらず、どこの馬の骨とも分からぬ輩の話を丁寧に聞いてくださりました。感動。
さらにさらに、私の1本の電話がきっかけとなって、とんでもないプロジェクトが動き出しそうなのであります。ああ、私はやはりあの時、何モノかに動かされたんだ。
この「歴史と私」は、ご自身の人生と業績を振り返る内容となっています。そして、それが、私のようなモノにとっては、まさに昭和史そのものとも言えるほど実に濃くて深い。すなわち、伊藤先生の研究対象が昭和の大物ばかりだということですね。
世の中では、いわゆる「物語」として語られることの多い、その研究対象たち。笹川良一もそうでしたが、巷間に流布するそうしたイメージのひとり歩きを、科学的研究姿勢によって、実に見事に修正し、時に覆し、あるいは補強していく。すごいですね。
こうして「近過去」をコト化していくということは、歴史学という科学が、物語に食いつくされないための大切な大切な基礎になります。すなわち、未来の「歴史」が過たないための礎となるのです。
東大の日本史という、どうしても左寄りだというイメージが強い世界で、孤軍奮闘する伊藤先生の姿は実にかっこいい。まさに左翼の生み出す「物語」に一人反旗を翻し、奪われた領土を奪回していくような、そんな侍のような姿が、この本の中には浮かび上がってきます。
とは言っても、決して力んでいない。そこがまたカッコイイ。この本でも、共産主義とは、革新とは、ファシズムとはなど、おそらくご自身を苦しめたであろうことに対して、ある種愛情すら感じるような淡々とした口調で語っておられます。
そんな静かなる侍だからこそ、この本の冒頭で語られる、ある「夢」が実現したのでしょう。神降臨…私にはそうとしか思えません。
その「夢」とは、今上天皇陛下との二人っきりの一時間半。陛下との日本近代史問答。すごいですね。
そんな大先生を電話一本で動かしてしまう私も私ですが…なんて、決して私自身の意志と言葉だけでお電話したのではありませんよ。私はあくまで伝達役だったのです。そういう意味では本当に光栄です。おそらくは近いうちにお会いする機会があることでしょう。
出口王仁三郎の霊界物語や、偽書と言われる宮下文書、さらにはトンデモの頂点とも言える仲小路彰ばかり読んでいる私のような人間と、アカデミズムの大家である伊藤先生に、まさか接点があるとは…これはいったい何なんでしょうね。歴史のいたずらでしょうか(笑)。
楽しみであると同時に、とても緊張しています。
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