東京オリンピックエンブレム発表
東京オリンピック2020の開会式まで、ちょうどあと5年。ついに今日、そのエンブレムが発表されました。
皆さん、どのようにお感じになりましたか?
ネット上では予想通り賛否両論。当然ですね。
私は、内心ホッとしました。とっても遠いところでですけれど、今回のエンブレムなど、東京五輪のデザインに関してご縁をいただいた者としては、本当に安心できるデザインでした。
さすが、私も大尊敬する永井一正さんが頂上から見守ってくれただけのことはあります。そう、50年前の東京五輪のデザインにも大きく関わり、札幌オリンピックのシンボルマークをデザインした永井さんだからこそ、五輪とデザインの本質的な部分が分かっていらっしゃる。
もちろん様々な条件と制約(実はこれが大変だそうです)の中で、大変な葛藤やご苦労があったことでしょう。しかし、このデザイン、充分に日本らしさや東京らしさを表現できているのではないでしょうか。
いや、これからどんどんその表現が拡がっていくものと思われます。つまり、どんどん生まれるんですね、表現が。
それこそがデザインというものですよね。カッサンドルはデザインの力を「強盗が斧を持って闖入する」と表現しましたが、日本のデザインはもう少し上品で鷹揚な感じもします。
言うなれば「光源氏」。つまり、期待に胸高鳴らせる女性の部屋に、月夜、突然窓から侵入するような感じ(笑)。
期待していたとはいえ、実際に侵入されると、さすがに最初は「え〜!」とか、「まじ?」とかなりますよね。しかし、時間が経つにつれ、暗闇の中から様々な情報が浮かび上がってくる。
ほのかな匂いであったり、低い声であったり、優しい言葉であったり、体温であったり、だんだんとその光源氏世界に慣れ、引きこまれていく。そして、夢と現実が一致する。
それがデザインの力ですよ。そういう意味で、このたびの佐野研二郎さんのデザインは、可能性を含むシンプルさということで言うと、かつての東京、札幌、長野のそれに劣っていないと感じます。
ここのところ、各国のオリンピックそれ自体や、それらのエンブレムが実にがしゃがしゃしていたのに比して、もう一度原点に帰ろう的なメッセージを感じましたね。おそらく海外からも高評価を得られるのではないでしょうか。
生活の中になじんでいきながら、その人たちの人生を変えるのがデザイン。絵画との違いは明らかです。
もうすでに、私にはいろいろな意味が見えてきました。面白いですね。明日になったら、また違った図形や空間が見えてくるのでしょう。デザインは生き物です。
ここから、この生まれたばかりのエンブレムがいかに私たちの心を変えていくのか。それはおそらくデザイナーはもちろん、永井さんも、いやそれ以前にこのエンブレム自身も知らないことでしょう。だから楽しみになのであります。
ちなみに、すったもんだの末白紙に戻った新国立競技場ですが、あのデザインにはそういう可能性が感じられなかったので、私としてはゼロにリセットされて良かったと思っています。とりあえず日本人がデザインしなきゃ。
工期のギリギリ感も含めて、日本人らしさを発揮する良い機会が神様から与えられましたね。そちらも楽しみです。
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