物語る声…小林賢太郎テレビ
小林賢太郎はものすごく伝統的、古典的なことをやっているのではないか…そう思いました。
録画してあったのに、なかなか観る時間がなかったMHKBSプレミアム「小林賢太郎テレビ7」を下の娘と鑑賞。
今度我が中学の「コント部(仮)」がキングオブコントに挑戦する予定でして、そのネタをそろそろ作らねばなりません。その関係で、録画してあったNHKのコント番組「LIFE」「七人のコント侍」、そしてこの「小林賢太郎テレビ」をまとめて観たのであります。
小林賢太郎テレビについては、2009年の初回放送についてはこちらに感想のようなものを書きました。そこにも書いてあるように、小林さんの「笑い」の発想は右脳と左脳の協奏にあると思います。今回の7でもそれを強く感じました。
言語が入り口なのだが、その言語の社会的ルールに縛られずイメージを膨らめていける。そういう才能はやはり右脳の働きによるものでしょうね。
考えてみると、日本語は諸外国語とは違って右脳で処理されるというのは、昔から有名な話ですよね。そういう意味でも、実は小林さんのネタの作り方は伝統的、古典的なのかもしれません。
この番組を観ながら思い出した文章があります。そう、たまたまこれも最近高校3年生の受験指導をしている中で出会った文章。京都大学の入試問題。
太宰治の娘、津島佑子さんの文章「物語る声を求めて」です。皆さんもぜひこちらでお読みください。
そうか、小林賢太郎は現代の「口承の物語」なのかもしれないな。ただの「お笑い」ではない、もっと日本人に根源的な「面白い」の追求。
そう言えば、小林さんは「『面白い』の領域は無限。『美しい』も『不思議』も『かわいい』も、みな『面白い』に入る」と語ったそうですね。そう、たとえば「こわい」もまた「面白い」に入りますよね。生徒たちは「怖い話」大好き。ヒマさえあれば「怖い話して!」と要求してきます。もちろん嬉しそうに(笑)。
小林さんのコントを「文学的」と称するのは簡単です。しかし、私はそうは簡単に言いたくない。すなわいち、津島佑子さんの言う「近代の文学」と対置される「口承の物語」に近いからです。
それは別の言い方をすれば、言語がイメージと未分化な状態。言葉が絵や音や物に随従しているんですよ。だからこそ言葉自身が自由であることができる。
おそらく、おそらくですが、日本において、言語がこれほどにいばり始めたのは、明治維新以降のことではないでしょうかね。まさに近代文学、私小説なるものが登場したあたり。
いつも書いているように、私は小説というジャンルは非常に特殊な時代の特殊なものであると思っています。だから、結局今はほとんど死に体になっている。
せいぜい「自分」というモノに付随しているくらいでよかったのに、まるで数字の抽象性に挑戦するかのように、ある種の普遍性を持とうとしてしまった。
小林賢太郎さんの「作品」も、あまり「芸術性が高い」とか「文学的だ」とか「ハイレベルだ」とか言わない方がいいですね。
もっと感覚的に、つまり右脳的に、あるいは古代人的に捉えた方がいいのではないでしょうか。彼が「物語る声」を、寝床で母親の昔語りを聞く子どものように、あるいは見世物小屋にドキドキする子どものように、 受信することができたら…。
全部見終わり、「頭の良さというのにはいろいろあるよな」と、娘に言ったら、「そうだね」と納得したようにうなづいていました。中1の娘は、いつまでこの縄文人的感性を持ち続けられるだろうか…そんなこともふと思ってしまったのであります。
と、人の心配をするより、まず自分が古代人、いや宇宙人的な脳ミソの使い方をしてネタを作らなければ。
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