『東京藝大物語』 茂木健一郎 (講談社)
数年ぶりに小説を読みました。
この前ちょっと書いたように、私は国語のセンセイでありながら、とにかく小説が苦手。ほとんど読んだことがありません(教材や入試問題としては読みますが)。
この「小説」も実は小説として読んだのではありません(笑)。だから、小説としておススメするのではない。
まあ、この「小説」自体、純粋な小説とはいえないところもあるんですよね。ほとんどノンフィクションなのではないでしょうか。
作者自身も登場しますし、作者の主張や思想もそのまま書かれています(講義録のような形で)。登場人物もほとんど全て実在しています(たぶん)。学生は本名ではないと思いますが、有名なアーティストや哲学者たちは実名で登場しています。
それらを通じて書き留められている芸術(特に美術、アート)に関する情報が、私にとっては非常に刺激的でした。だから小説を読んでいるというよりは、エッセイを読んでいるというか、ドキュメンタリー番組を観ているような面白さがありました。
東京藝術大学…今でも憧れの大学です。もちろん過去も今も未来も行けるはずのない、まさに憧れの大学であります(私の中では日芸と双璧)。
自分の叶えられない夢を、教え子や実の娘たちで実現できるのが、まあ教師業のちょっとおいしいところですね。実際、芸大と日芸には教え子を送り込みました。
今は、二人の娘たちをその気にさせているところです(笑)。もちろん二人とも小さい時から楽器や絵をやっているわけではないので、ある意味裏ワザ的な方法での実現を考えているわけですが。そういう裏ワザ的な方法を知ることができるのもセンセイの特権ですね。あっ、もちろん裏ワザと言っても裏口ではありませんよ(笑)。
この小説には、まさに私の憧れというか期待どおりの空気が充満しておりました。アヤシい学生、ぶっ飛んだセンセイ、熱い議論、寒い作品(笑)、浮世離れした悩み、そして恋…。
ああ、やっぱり憧れるなあ。私は芸術家にも天才にもなれなかった単なる変人。だからこそ永遠の憧れなのでしょう。これはほとんど信仰に近い。
そう、私の最も尊敬する芸術家、そして天才の一人である出口王仁三郎は、いとも簡単に「芸術は宗教の母なり」と喝破しました。「宗教は芸術の母なり」ではありませんよ。逆ですよ。
私はそれがよく分かります。おそらく茂木さんも(脳科学的に)王仁三郎の言ったことに納得するんじゃないかなあ。この小説を読んでそう思いました。
一方で、芸大を出ていない超一流の存在、「芸大なんか行ってるようじゃダメだ」という、この小説にも登場する、たとえば荒川修作センセイのような存在もよ〜く分かっています(茂木さんもワタクシも)。
この「東京藝大物語」の本質なテーマはそこにあるのかもしれませんね。
Amazon 東京藝大物語
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