積極的にリスクを負う
今日は地域の教育関係者の集会に参加。なにかと閉鎖的なのが学校というところ。縦横の連携もお題目だけに終ることが多い中、この地域は比較的頑張っていると思いますよ。
今日のプログラムには講演があり、その内容もなかなか興味深いものでした。「安全にリスクを負わせる」のが教師業だと思っている私にはぴったりの内容でした。
その中で、紹介された羽生名人の言葉が印象的でしたね。
「積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にする」
今の「学校」は、とにかくリスクを避ける傾向にあります。(特に公立の)センセイの仕事がリスクヘッジに終始している。全く本末転倒です。
今日の講演にも「成長痛」が登場しましたが、成長には痛みが必要です。快適なだけの環境は人を成長させないどころか、堕落さえさせます。
教師は、「安心・安全・信頼・自信」をベースにして、その上にその生徒、学級、学年、部員などに適切に「痛み・悩み・苦しみ・衝突・反抗」などを演出するプロでなければなりません。そういう職人であるべきです。
そういう意味で、私たちは「リスク」をたくさん体験して、そのリスクのマネージメントができる人間である必要があります。理屈ではなく体験的に。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と言いますが、今の学校は虎穴に入らないのはもちろん、虎穴には近づかない、あるいは前もって虎穴を埋めてしまうというようなことが横行しています。
それがはたして「学校」「教育」なのか、私ははなはだ疑問に思っています。もちろん、いたずらにリスクを与えよなどと言っているのではありません。
それにしても、特に若手の教員にある種の冒険がないのには、大変物足りなさを感じます。おそらくは世の中の風潮、特に親やマスコミの見方が変わってしまったのでしょうね。
「体罰」という痛みについては、これは議論の分かれるところであり、やはり私は積極的に賛成できない立場ではありますが、場合によってはそういう「痛みの共有」のしかたがある可能性については、私たちの生活、人類の歴史を見れば、そうそう簡単に否定できるものではありません。
羽生善治さんの言葉をもう少し長く引用してみましょう。
「リスクを避けていては、その対戦に勝ったとしてもいい将棋は残すことはできない。次のステップにもならない。それこそ、私にとっては大いなるリスクである。いい結果は生まれない。私は、積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にすると、いつも自分に言い聞かせている」
なるほど、この言葉には二つの解釈ができそうですね。
まず、今のリスク体験が、未来のリスクに対する対処法、あるいは軽減法を獲得する唯一の方法であるという意味。
そして、さらに、リスクを積極的に負うということが、自分の成長を促す、逆に言うとリスクを積極的に負わないことが、自分の成長を妨げるというリスクになるというパラドックスだという意味。
さすが深いですね。学校でも本当にそうだと思います。日常的なリスクをなんでもかんでも避けていることが、学校の本質、教育の本質を失うリスクになっています。
今日もあるクラスで、リスク対処の失敗談を話して大笑いになったんですが、私はけっこうリスクを負って生きていきている方ですし、その体験的対処法もけっこう知っていると思います。
私が時々言っている「死なない力」って、そういう経験からしかつかめない。教科書にはほとんど書いてない。そういう(いろいろな意味での)「九死に一生」「起死回生」体験を伝えるのも、私の仕事の一つだと真剣に考えています。
「死なない力」って絶対必要ですよ。一ヶ月くらい飯を食わなくても死なない。富士山が噴火しても死なない。病気になっても死なない。いじめられても自殺しない。戦争になっても死なない。経済危機が来ても死なない。「生きる力」ではなくて「死なない力」ですよ…なんて、ホント変わったセンセイですよね(苦笑)。
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