『日本近現代史の「裏の主役」たち』 田原総一朗 (PHP文庫)
昨日「読書」を否定的に書いておきながら、今日は本の紹介。スミマセン(笑)。
出口王仁三郎や仲小路彰に不思議な縁ができた私としては、この本で取り上げられている(表紙にもあります)北一輝、大川周明、頭山満、松井石根らに興味を持たざるを得ません。
今名前の挙がった6人は、まさに日本近現代史の「裏の主役」ですよね。逆に言えば、一般の方にはほとんど知られていない。
この本を読んでつくづく再確認させられたのは、そうした裏の主役たちは、戦後レジーム(唯物論や単純な左右対立の構図)では全く解釈できないスケールを持っていたということです。
戦前の(もちろん江戸時代以前も含む)日本はすごかった、あの頃の男たちは熱かった、というようなノスタルジックな気持ちにも当然なりますし、すっかり骨抜きされてしまった今の日本の国や、自分をも含めた今の男の情けなさにガッカリもしてしまいます。
上記6人だけとっても、本当に右とも左とも取れてしまって、私たちは混乱してしまいます。デジタル的思考に毒されていると、彼らの崇高な「不二(ふに)」の境地は全く理解できません。
田原さんも重ねて語っていますが、彼らには「武士」の精神が生きていた。だから、「士農工商」の「商」すなわち貨幣経済、資本主義に対する嫌悪感が強くあったというのは、なかなか現代人には理解しがたいところでしょう。武士は食わねど高楊枝と言われても…。
しかし、これだけ貨幣の価値が絶対化し、さらには資本主義市場経済が全世界を覆い、さらにはマネーという実質を伴わない概念が情報とともに飛び交う時代になったからこそ、そうした「武士」の清廉や清貧というものが、再び注目されてもおかしくありません。
実は、いわゆる「歴史認識」というのも、こうした精神的、思想的、もっと言うなら霊的な視点や感覚を抜きにしては語れるはずもありません。
「認識」の主体は「今」の私たちですから、「歴史認識」は「当時」の歴史からすれば本来間違うべきものです。当たり前です。
私たちがもし、私たちの人生を、100年後の「今」の人たちの価値観で解釈されたら、絶対反対したくなりますよね(きっと)。
私は歴史家ではありませんので、どちらかというと、当時の「霊的」な部分をなるべく共有し、共有に限界があるとしても、そこに「今」の霊性とは違った霊性があったという事実(歴史)だけは認めたいと思っていますし、そう努力しているつもりです(だから変な人、アブナイ人に見えるのかも)。
田原総一朗さんも最近変わってきたなあと思います。どちらかというと、こちら側に近づいてきたのかなあと。この本は5年くらい前に書かれたものですが、当時の民主党政権下の日本になんとも言えない危機感を抱いていたのではないでしょうか。筆致にそれを感じます。
私は本当に頭が悪い(特に記憶に障害がある)ので、この本を読んでも、なかなか細かい情報は覚えられませんし、うまくまとめることができません。しかし、田原さんの言葉を通じて、その当時の男たちの、得も言われぬザワザワ感や、逡巡していられないワクワク感、そして失敗を恐れる(つまり死を覚悟する)ドキドキ感(それらはまるで恋愛のようですが)を共有することだけはしっかりできたような気がします。
今の私も、彼らほどではもちろんないにせよ、どこか焦りに似た、ザワザワ感、ワクワク感、ドキドキ感があるんですよね。
もしかすると、私は彼らと同じように、日本や地球や宇宙に恋をしているのかもしれませんね。そういう意味では、彼らを「アジア主義者」と矮小化するのもどうかと思われますね。
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