山部赤人の本当の気持ち(その2)…富士高天原伝説!?
昨日の続きです。こっちの方が「大発見」かも(?)。
昨日の短歌はいわゆる「反歌」です。かえし。つまり、その前にある長歌とペアで味わうべき歌です。
その長歌とはこのようなものです。これも有名ですね。
天地の 分れし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 布士の高嶺を 天の原 振り放け見れば 渡る日の 影も隠らひ 照る月の 光も見えず 白雲も い行きはばかり 時じくそ 雪は降りける 語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ 不尽の高嶺は
一般的な訳をしてみましょう。
天地が分かれた時からずっと神々しく高く貴い駿河にある富士の高峰を、天遠く振り仰いで見ると、空を渡る日の光も隠れ、照る月の光も見えず、白雲も行く手を阻まれ、時を問わず雪は降っているのだった。語り継ぎ、言い継いでいこう、富士の高嶺については。
だいたいこんな感じですよね。教科書や専門書に載っているのは。
ここでの「時じくそ」という言葉を受けて、「田子の浦ゆ〜」の反歌が詠まれるわけです。だからこそ「夏の雪」なのです。そのあたりがちゃんと解釈されてこなかったのは残念ですね。
さらに!今日はとんでもない真実を(?)をここに開陳いたします。
私は「富士高天原」伝説を研究している者です。つまり記紀神話には出てこない別の神話体系に興味があるわけです。
ご存知のように、記紀にはなぜか日本の象徴であるはずの富士山が一度も登場しません。これは不自然きわまりない事実です。
いや、逆にごく自然だとも言えますね。すなわち、大和朝廷(といちおう言っておきます)が、自らにとって不都合な、あるいは敵対する文明(王朝)を、あえて無視するということは大いにありえるということです。
一方、東国色の強い万葉集には、多くの富士山が現れます。山部赤人の歌はその代表です。
そのような知識をもとに、もう一度この長歌をよく読んでみましょう。
まずふと目につくのは、「高天原」という言葉です。「布士の高嶺を 天の原」という部分に「高天原」が隠されているというわけです。
「高天原」と言いますと、記紀の方では「タカマガハラ」と訓みますが、記紀以外の神話体系では「タカマノハラ(あるいはタカアマハラ)」と訓むことが多いのも気になりますね。
さらにその先を読むと、さらに暗号が隠されていることが分かってきます。富士山が阻んでいるものが三つ挙げられていますよね。
日、月、雲…
どうでしょう、この三つの単語を見て、何かを連想しませんか?
そうです。記紀に登場する三貴士、すなわちアマテラス(日)、ツクヨミ(月)、スサノヲ(雲)です。「雲」がスサノヲだというのは、もちろん出雲、八雲からの連想です。
その三貴子が遠慮してしまうほどに、高く貴き富士山だというのです。それも天地が分かれた時から。
天地開闢の時、最初に現れた神は、日本書紀によれば国常立尊です。富士高天原においては、主宰神は国常立であったと考えられます。実際、そのような伝説が伝わっていますし、出口王仁三郎の神話体系も基本的に富士山と国常立を結びつけています。
記紀以降、特に皇室において重要視されていった天照大神よりも、もっと古い神話体系、あるいは信仰の対象というのがあって、その象徴が富士山であった。しかし、大和朝廷から神武天皇につながっていく勢力によって、そうしたより古い(縄文系の)王朝が駆逐されていくことになる(ヤマトタケルの東征や神武の東征はその象徴)。
しかし、東国を中心に、その古い信仰や伝説は生き残りました。もちろん表向きには忘れ去られましたが、地下水脈として沈潜していったわけですね。
山部赤人がどういう事情で、そのより古い信仰や伝承を重要視したか分かりません。しかし、たしかに富士山をその象徴として特別視していることはたしかです。
その強い意志は、長歌の最後の部分「語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ 不尽の高嶺は」にはっきり表明されていますよね。
この隠された「富士高天原伝説」は、記紀万葉から400年ほど経った平安時代中期に成立した更級日記に突如として(さりげなく)再登場しています(こちら参照)。この日記の記事も今まではあまり注目されてきませんでした。やはり何かありますね。
…と、いかにもな「暗号論」的解釈でありますが、皆さんはどうお感じになりましたか。
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