『円空・木喰展』 (山梨県立博物館)
連休中も開催していますので、山梨においでの方はぜひお立ち寄り下さい。素晴らしい内容です。
何かと対比されることも多い円空と木喰ですが、その根源にあるのは、ともに庶民の信仰のエネルギーと、江戸時代特有の、禅味と粋の交錯だなと感じました。
日本のデザインはここに一つの極点を見出したのではないでしょうか。
直線の円空と曲線の木喰、たしかにそれは対照的ではありますが、もともと「線」として捉えるところ自体、日本人の「輪郭線」的な図形認知のなせるわざでしょう。
木喰(その弟子)については、同じ山梨県立博物館で開催された展覧会の感想など、過去に三回記事を書いています。
木喰仏の笑み
『木喰展−庶民の信仰・微笑仏』(山梨県立博物館)
『木食白道 知られざるもう一人の木食』 (山梨県立博物館)
ああ、思い出した。木喰の「フォント」デザインはモダンでアヴァンギャルドだったなあ。今回は残念ながら「利剣名号」はあまり展示されていませんでした。まあ、今回は円空とのコラボですから、あくまで木像が中心ですよね。
木像と書いてこちらも思い出しましたが、ほら、あの夏目漱石の「夢十夜」の第六夜に運慶の造作について若い男が、「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋うまっているのを、鑿のみと槌つちの力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」と評するシーンがあるじゃないですか。
あれって運慶の時代の仏師の流儀じゃないですね。江戸の流儀ですよ。つまり、円空や木喰らはそういうタイプの造形家だと思います。
この展覧会においても、いくつか立木仏や生成仏がありました(というか、ある意味ほとんど全てが生成り)。まさに木の中に仏を見つけて彫り出すというような他者性(モノ性)が感じられました。それが日本流だということです。
逆に言えば、夏目漱石はやはり江戸の人だということですね。近代人ではない。そういう発見がありましたね。
微妙に時代が被っていない円空と木喰ですが、どこかで接点があったのかなあと思っていたら、なるほど、下呂の温泉寺にはもともと両者の仏像があったんですね。すなわち、少なくともそこで両者(仏像)は出会っていたということです。
それから、前に木喰の歌として「みな人の心をまるくまん丸に どこもかしこもまるくまん丸」を紹介しましたが、今回展示の中にいわゆる青表紙歌集がありまして、その「ま」の歌が「丸々と まるめまるめよ わが心 まん丸まるく まるくまん丸」でありました。これもいいなあ〜としみじみ思った次第です。
とにかく新発見・初公開を含む200を超える円空&木喰の修行の痕跡を観ることができるこの展覧会、見逃せませんよ。
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