もう一度「八紘一宇」について
飽きっぽい世の中はもうあの騒ぎを忘れてしまったようです。三原じゅん子議員の「八紘一宇」発言。
私の意見は先月、八紘一宇≠八紘為宇という記事で表明しましたとおりです。
実は、先日、興亜観音を訪れた時、この「八紘一宇」の文字を何度も見ることになりました。
そう、松井石根さんの自筆の「八紘一宇」の文字がいくつも掲げてあったのです。
私は正直感動しました。あの時、松井さんが心から純粋に目指したであろう理想世界が、その自筆の文字から非常に明確な形で伝わってきたのです。
ああ、なるほど、これは私の言う「八紘為宇」であり、「グローバル・ファミリズム」そのものを意味していたのだなと。
しかし、あくまで、それは「あの時」の話です。それをその後や今にまで敷衍するのは、やはり間違っていますし、危険なことです。言葉の歴史に付き合ってた私としては、特にそのような思いに至るのは当たり前といえば当たり前です。
もちろん、「あの時」の意味をまずは現代に正しく伝えることも重要です。「あの時」の意味を知らないで、ただ侵略思想だというのはもっと間違っているし、もっと危険なことですから。
そういう意味で、昨日の産経新聞正論に掲載された大原康男国学院大名誉教授による『三原じゅん子の「八紘一宇」発言 その本義とは』は良い小論だったと思います。
なるほど「universal brotherhhod」ですか。私の「global familism」とはちょっとニュアンスが違いますが、なるほどと思える訳語ですね。
この大原さんの記事について、これも興亜観音でご住職さまとお話した際に話題に上がりました、水島総さん(静岡高校の先輩です)が今日の番組でコメントしておりました。こちらもぜひご覧ください。
正しくは「八紘為宇」であるということもさりげなく言っておられますね。そして、その「八紘為宇(一宇)」が、いわゆるアメリカの唱導するグローバリズムや、左翼的な地球主義とは明らかに違うものであることを強調しています。
水島先輩のおっしゃる「家族」というのは、私の言う「familism」に近いですね。理屈ではない、言語(コト)以前のモノである家族という文化。多様性とその自然的統合の象徴たる家族。
以前も書きましたが、かの笹川良一さんの「世界は一家、人類は皆兄弟」も実はかなり八紘為宇に近いですね。
そうそう、上掲の笹川さんの評伝をお書きになった歴史学界の重鎮伊藤隆さんに、最近ですが電凸(電話で突撃)してしまいました。突然のお電話にもかかわらず丁寧に対応してくだりました。近々お会いすることになりそうです。
その話にも大いに関わってくる、例の仲小路彰の「グローバリズム」も、基本的に八紘為宇だと思います。仲小路は昭和22年にはすでに「グローバリズム」をキーワードにしていました。もちろん、現在の経済を中心としたグローバリズムとは違った意味で使っているわけですが。
ですから、私は仲小路の思想を現代に蘇らせるために、あえて「ファミリズム」を「グローバル」のあとにつけたのです。そうしないと、それこそ八紘一宇と同様に違った意味で捉えられられかねない。
言葉というのは難しいですね。言葉は地図のようなものです。人間の都合で、時代が変わると、地図に対応すべき実際の地形や建造物はどんどん変わっていってしまいますよね。
ということで、私は「八紘一宇」を現代において、ただただ復活させて使えばいいというものではないと思っているのです。
そんなことをちょいと皮肉りながら作り、短歌結社誌「未来」に投稿した歌がこれです。分かる人には分かると思います(笑)。
顔はだめボディやんなと命じたる女語れり八紘一宇
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