「空っぽ」の吸引力
妙心寺でのお話その二。
開山堂を拝観した私たちは続いて「微妙殿」へ。布教師によるご法話を頂戴いたしました。
これがとてもいいお話でして、まさにすんなりと心に収まったのであります。
まずは「仏心」のお話。私たち衆生にも全て仏心は備わっている。ただ、それが、富士が雲に隠れるがごとく見えなくなっているだけ。本当はそこにあるのだと。
そして、「仏心」とは「智慧と慈悲」であると。そうですね。
「智慧」とは「素直に感じる心」、「慈悲」とは「他者を自分のように大切にする心」だとのこと。納得ですね。
まあ、ここまでは、仏教をかじったことのある方なら、よく聞くお話ではないでしょうか。中学生たちにとってもきっと納得できる内容だったと思います。
私が非常に関心したというか得心したのは、その次に語られた「座禅」の目的のお話でした。なるほどと思いました。
「空」を観ずると言ってもなかなか難しいですよね。それをその布教師の方は「空っぽ」という身近な言葉を使ってとっても上手に表現されていました。
「頭も空っぽ、腹の空っぽ、心も空っぽにする。すると、外からすんなり入ってくる」
たしかに、現代人と言わず、人間はずっとずっと「頭いっぱい、腹いっぱい、心いっぱい」にすることばかりに執心してきましたよね。近代化とはすなわちそういうことだったと思います。
しかし、私たちはついつい「いっぱいいっぱい」にもなりがちです。ある種の豊かさを求め続けているうちに、いつのまにか、「いっぱいいっぱい」になってしまって余計に苦しくなってしまう。
いつかどこかでリセットしなければ、あるいはせめて整理整頓して「空っぽ」の部分を作らねばなりません。
その一つの方法が「座禅」であり、体(姿勢)と息(呼吸)を調えて、結果として心も調えられる。すると、そこに「素直な智慧」や「慈悲の余裕」も生まれるわけですね。
おそらく人間の「いっぱいいっぱい」感というのは、現代に近づくほど大きくなってきたわけではなく、私たちは古代からずっと同じくらい「いっぱいいっぱい」だったのではないでしょうか。
座禅はメディテーション(瞑想)よりも積極的な意味があるのかなとも思いました。すなわち、瞑想は心を落ち着ける「ゼロ」を目指すのですが、座禅はそれ以上に吸引力のある、ある意味「マイナス」を目指しているのではないかと。
「空」というのは「ゼロ」でもないし、Emptyとも違う。もっと積極的に他者になりきる力を蔵する境地なのではないでしょうか。
昨日の記事の続きで言うならば、モノの本質がそこにあるのだとも思います。モノはあらゆる可能性を持っています。コトは情報ですから不変です。
実際、このご法話を拝聴してからの座禅の時間には、あちらからやってくるひらめきのようなモノがあったような気がします。
そう、物体とか非人間という意味ではなく「モノになりきる」というのが座禅の妙道のように感じたのです。
もちろん私はエセ坊主ですから偉そうなことは言えませんが、しかし、昨日書いた「思いの蓄積」が「ウツワ」になった自分の中に、すっと流れ込んできたような感覚をつかんだのは事実です。
本当にありがたいお話でありました。
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