バッハ『幻想曲とフーガハ短調(BWV537)』
今朝のNHKFM「古楽の楽しみ」でバッハのオルガン曲「幻想曲とフーガハ短調」が流れました。夢見心地で聴いていたのですが、なんとも不思議なヴィジョンが脳内に展開しまして、自分でちょっと驚いてしまいました。
この曲、私の感覚としては、バッハのオルガン曲の中でも特に「深刻」な感じのする曲です。
いかにもバッハらしいと言えばバッハらしい。バッハらしすぎる(笑)。
上に紹介した動画はトン・コープマンによる演奏。一番好きな演奏です。バッハの弟子のように弾きたいというコープマンらしい「生きた」演奏だと思います。昨日の話の続きで言えば何かが降りてきている、すなわち「ものまね(モノを招く)」ですね。
この曲、幻想曲での「ため息」の音型、フーガ中間部での半音階上昇進行の第二テーマなど、キリストの受難と昇天を思わせるドラマ性があります。
そういう意味では、楽譜に絵画性があるとも言えますね。ため息や半音階を視覚的にご覧ください。
ドラマ性、絵画性ということで言いますと、この曲をかの(威風堂々の)エルガーがオーケストラ用に編曲してるんですよね。
さすがこの曲を選ぶかという感じ。というか、この曲を選んだのは実はリヒャルト・シュトラウスだという話も伝わっています。なんでも、二人がランチしながら会話の中で、幻想曲をシュトラウスが、フーガをエルガーが管弦楽編曲しようということになったのだとか。
で、エルガーは約束通りオーケストレーションしたけれども、シュトラウスは忙しかったのでしょうかね、なかなか完成させられなかった。そこで、ヒマだった(?)エルガーが幻想曲も編曲しちゃったと。
まあ、結果としては統一のとれた作品になってよかったのでは。
後期ロマン派らしいド派手なオーケストレーションが楽しい…いや、それがどうしてどうして、不思議とはまってるんですよね。それがこのバッハの楽曲の未来性というか普遍性なんでしょうね。
映像で観ると、タンバリンが出てきちゃったり、ハープがポロロロロンと出てきたり、ちょっと笑っちゃいますが、これでも本質を全く失わないどころか、オリジナルとはまた違う魅力を醸しだしてしまうところが、さすがバッハですね。
実際のところ、晩年のバッハが楽器の指定さえしなかったように、もうすでに物理的な楽器の制約を超えたところで、彼の音楽は鳴り響いていました。
エルガーやシュトラウスの時代、肥大化した管弦楽曲のカウンターで「Back to Bach」が標榜され、新古典主義が流行の兆しを見せていましたけれども、皮肉なことに、BachにBackするということは、「Back to the future」だったわけです。
おそるべし大バッハ(大小川?)。バッハは未来にいたとなると、音楽の父ではなくて、音楽の…ん?いったいどうなるのてしょう(笑)。まあ、「神」と言っておけばいいのでしょうね。
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