『心配事の9割は起こらない』 枡野俊明 (三笠書房)
減らす、手放す、忘れる「禅の教え」
禅には興味があります。働いている学校が禅宗のお寺を母体としていますし、禅僧の方とのおつきあいも多いもので。
だいたい、私自身が「坊主(頭)」ですので、特にホンモノのお坊さんからはホンモノのお坊さんだと思われる傾向があります(笑)。ニセモノなんですがね。
ということで、この本の内容も、日常的に触れているものがほとんどでした。
減らす、手放す、忘れる…これは先日書いた「空っぽ」の吸引力のことですよね。しかし、これがなかなかできません。
そう、野狐禅の私としては、禅の思想についてはたしかにいろいろ知っているつもりになっていますが、実行できているかというと、まあほとんどノーですね。
だいたい冒頭の「莫妄想」からして全然ダメです。なにしろ「妄想実現党」党首ですから(笑)。
よく言われる、「今」を大切に、未来や過去に執着を持つなというのも、妄想派からすると難しい。ほら、私は「時間は未来から過去へと流れている」派でもあるじゃないですか。未来に対していい妄想をすると、それが実現する、悪い妄想をするとそれも実現するという考え方です。
そうそう、心配事は1割でも起きたらいやですけど、良い妄想のうち1割起きればラッキーですよね(笑)。
ま、そんなこと言う時点で、根本からブッダの発想と異なってしまっているわけです。
この本のタイトルの「心配事」とはまさに「未来に対する悪い妄想」です。だから、この本のように「莫妄想」を唱えるのもいいのですが、私はより積極的に「心配事なんかしないで、なんとかなる、いいことがあると妄想せよ」と言うわけです。
私はブッダの哲学、あるいは禅の思想というものについて、その価値や実利についても、たしかに究極の理想だと思いますが、しかし、実際この二千年以上の間、それがなかなか万人において、いやほんの一部においてもなかなか実現してこなっかたという現実もしっかり見たいのです。
それは、他の宗教や哲学や思想についても同じことが言えます。では、現実的に、今の人類のレベルでどうすればいいのかを考えたい。
共産主義と一緒です。理想は理想でいつまでも遠未来的には掲げていなければならない。しかし、近未来的にはより実際的な方法も考えなければならない。一歩一歩進化していきたいですよね。
というか、私自身は私自身の脳ミソでしか自分や世の中を見られないので、私にとっての現在の理想は「妄想実現党」なのです。
原因を断ってしまえというのは、たしかに究極の解決策ですが、そうは簡単にいかないのは歴史が証明しています。それどころか、時代の流れは、その原因をより増大させる方向に動いていますからね。
実は私の考えは日本の神道の発想からヒントを得ているのですが、そういう意味では、聖徳太子が神道を近未来的な手段にしながら、仏教を遠未来的な理想としたのに近いかもしれませんね。
いずれにせよ、そうした理想を抱くことは非常に大切なことです。すなわち、この本にも大いなる価値があるということです。
特に遠未来を近未来、あるいは「今」に引きつけて実行する技術はたくさん書かれていますからね。それをどう継続するかが、我々のみならずお坊さんたちの課題でもあるのですが(苦笑)。
あっそうそう、帯には「他人の価値観に振り回されないように」とありますが、目次も本文の章題も「価値感」となっていて残念でありました。
Amazon 心配事の9割は起こらない
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