『江戸猫 浮世絵 猫づくし』 稲垣進一・悳俊彦 (東京書籍)
猫の日にちなんでお気に入りの猫本を紹介します。
古今東西、猫の絵は無数にありますが、日本の浮世絵における猫の存在感は明らかに世界レベル。
猫の生来持つ芸術性、デザイン性に、日本人独特の猫に対する感性がうまく働いて、このある種特殊な猫絵の世界が生まれました。
猫絵と言えば歌川国芳ですよね。この本でも全53作品のうち30くらいが国芳の作品となっています。それほど国芳の猫の絵は人気でしたし、実際に素晴らしい。
西洋画や現代の写真集のように、ただただ可愛い猫というのはほとんど登場せず、ある意味日本的なリアリズムによってデフォルメされた猫がワンサカいます。そう、本当の猫好きはけっこう「ブサイク猫」が好きですよね。
ウチにも黒2匹と白1匹がいますが、一番人気はブサイクな「シローさん」です(笑)。性格も三枚目。しかし頭は良く、そうですね、あえて言えば擬人化しやすい猫が人気なんですよね。愉快なおじさんというか。
国芳も白猫を飼っていたようですね。国芳の描く白猫は真っ白ではなく、ちょうどウチのシローさんのようにミルクティー色のブチがついています。それがまたなんとも魅力的です。
この本でも最初の方に紹介されている「其のまま地口猫飼好五十三疋」を見てみましょう。
まさに猫好きにはたまらないシーンと描写ばかりではありませんか。
のちに国芳の弟子たちも盛んに行った「擬人化」にも見られるように、猫は人間の生活の中で、人間の勝手な感情移入を受け入れて、どんどんキャラ化、物語化していきました。善玉、悪玉、あらゆるキャラを演じられる懐の深さが猫にはありますよね。
ものすごく達観した、まるで禅の高僧のようなたたずまいを見せたかと思うと、突然泥棒になったり、妖怪になったり…そうそう、最近も思いっきりキャラ化されてますよね。地縛霊とか(笑)。
こういう現代の文化もまた、江戸時代以来の伝統を守っているわけです。一方、キティーちゃんなんかもそうした流れの中にありますね。
というわけで、日本人と猫は実に幸せな関係なのであります。考えてみれば、もともと日本列島には猫はいなかったんですよね。唐猫として輸入されたのが奈良時代くらいでしょうか(九州はもっと前から)。
正倉院の宝物もすごいけれど、こうして時代を超えて日本にしっかり定住し、日本的に進化した「日本猫」たちってもっとすごいのかも。
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