「ギャフン」の語源
↓これには「参った」(笑)
授業である問題を解いていたところ、本文に「ギャフンと言わせる」という言葉が出てきました。こんな言葉とっくに死語になってるのかなと思いきや、中学1年生のほとんどが知っていました。やはりマンガなどに出てくるようで、意味も「参った(と言わせる)」とちゃんと説明してくれました。
ちょっと嬉しいような、ほっとしたような…我々昭和の少年たちはしょっちゅう目にしていましたね。しかし、実際に「ギャフン」とも言わないし、「ギャフンと言わせてやる」というような言い方もした覚えがありませんし、誰かが実際に「ギャフン」と言ったのを聞いた記憶もありませんね。
いったいこの「ギャフン」という言葉、なんなんでしょう。擬音語なのか、擬態語なのか…謎です。
ちょいと調べてみると面白い説が出てきました。
「捕らえられた大塩平八郎が『義や憤なり。悔しきかな』と言った」
これはどうでしょうね。「憤なり」という形容動詞の例がないので、こじつけという感じがします。大塩平八郎の乱は1837年。たしかに「ぎゃふん(ギャフン)」が文献に現れるのは明治時代以降ですので、つじつまが合わないことはないのですが、実は「ぎゃふん」より早く「ぎょふん」という言い方が江戸時代から使われているのです。
日本国語大辞典によると1766年の俳諧に「隠居きゃく留てくんなにぎょふんとし」という例があるのだとか。
この俳諧の意味は、ちょっとよく分かりません。隠居客とはなんでしょうか。隠居とは刑罰の「隠居」なのでしょうか。誰か教えてください。しかし、どうもこの「ぎょふん」は今の「ぎゃふん」と同じような「参った・お手上げ」といった意味だと説明されています。
で、「ぎょふん」「ぎゃふん」の語源ですが、「ぎょ+ふん」「ぎゃ+ふん」と考えるのが分かりやすい。つまり、「ぎょ」「ぎゃ」は「ぎょっ」「ぎゃあ」という驚きの副詞(感動詞)、「ふん」は「ふむ」と同じく納得の副詞(感動詞)と捉えるのです。
「ぎゃー!」と悲鳴を上げつつ、「ふ〜む…」と観念してしまう。その一瞬の心の動きを一語で表現してしまったのが「ぎゃふん」や「ぎょふん」ではないかと。
これは私のアイデアではなく、ネットに転がっている説ですが、まあなんとなく納得できますね。
「ぎょっと」という表現は17世紀末から文献に現れ、「ぎゃあ」は明治以降というのも、「ぎょふん→ぎゃふん」の傍証になります。
もしこの説が正しいとするならば、「ギャフンと言わせる」というのは、「ぎゃー!ふ〜む…」と言わせようとしているわけですから、「ギャフン」は擬音語と言ってもいいことになりますね。
というわけで、50年来の謎がいちおう解けました(笑)。
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