『日本の聖地文化-寒川神社と相模国の古社』 鎌田東二編 (創元社)
昨年亡くなった高倉健さんもお気に入りで、悩みがある時はよく夜に参拝していたという寒川神社。
ここのところ、「寒川」の謎(その1)」と「寒川」の謎(その2)」という記事を書きましたが、これらは明らかに「外伝」というか「別伝」です。本流やアカデミックからは一笑に付されるどころか全く相手にされない内容です。
こちらはいちおう本流でしょうか。とはいえ、鎌田東二さんはかなりユニークな学問をされる方ですので、この本もかなりぶっ飛んでいます(笑)。
縄文学から「宇宙人文学」まで。「うちゅうじんぶんがく」って一瞬「宇宙人の文学」かと思ってしまった(笑)。「宇宙(から)の人文学」です。ま、「宇宙の人文学」でもかなりユニークですよね。
この本では、もちろん宮下文書についての記述は触れられていませんが、富士山は当然でてきます。春分・秋分の日に富士山に日が沈むということですね。
実は、そうした「レイライン」的な発想がこの本の基礎にはあります。そう、縄文の遺跡はそうした太陽の運行と自然の地形の関係性における特異点に位置することが多いんですね。
たまたまこの本にも、私に縁の深い、秋田の大湯環状列石と山梨は都留市の牛石遺跡が並んで紹介されていました。
そう考えると、現代的なパワースポットブームやレイラインブームは、案外とものすごく古い信仰の体系と結びついているとも言えそうです。おそらく縄文人もアカデミックな考えのもとに生活していたのではないでしょうし(笑)。
それはまさに無意識に幽閉されている「モノ」の復権ととらえることもできます。この本にも出てくる「ナニモノカ」の存在(鎌田先生も「モノ学」の権威でいらっしゃいます)。
あるいは、やはりこの本でも紹介されている西行の歌「なにごとのおはしますかはしらねどもかたじけなさに涙こぼるる」的な感覚ですね。この歌では「なにもの」ではなく「なにごと」と「コト」が用いられているのも私としては興味深いところです。
さて、この本では、私とは違った発想で「寒川」という言葉や、「寒川神」について考察されています。それはそれで非常に納得できる内容でした。しかし、面白いなと思うのは、宮下文書の語る「寒川比古」が「山の神」であるのに対し、一般で言われる「寒川神」は「水の神」「海の神」であるという点です。
これは矛盾しているというよりも、やはり「山と海が川によってつながっている」という真実を象徴していると考えた方がいいのではないでしょうか。
そう、縄文人は、現代人とは違って「山」と「川」と「海」を分けて感じていなかった。まさに「コト」化する以前のモノという総体として捉えていたのではないかと。
それらを結ぶモノは「水」で象徴されます。その点、柳田国男が語ったという、「サム=聖」、「カワ=泉(水)」というのは面白いですね。つまり「寒川=聖水」ということになるわけで、その聖水の流れによって富士山と太平洋がグルっとつながる感覚というのが、私の考える(感じる)「寒川文化圏」そのものではないか。
この本では、どちらかというと関東平野における寒川神社の意味を考察していますね。それもいいでしょう。それも会ったことでしょう。
「八幡」のこと「安楽寺」のこと…宮下文書にも記述があることがいくつかあります。またいろいろ調べてみます。
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