北一輝と出口王仁三郎
二・二六事件から79年。来年80年ですか。
二・二六事件の理論的指導者とされた北一輝は事件後逮捕され、死刑になっています。
その北一輝が事件の3ヶ月ほど前に、出口王仁三郎を訪れ、革命資金の供与を頼んでいます。その額、今で言えば5億円。
王仁三郎はその申し出を断ります。北一輝は秘密を打ち明けたのに断られたとして、王仁三郎殺害をもほのめかしますが、王仁三郎はなんとなく煙にまいてしまいます。
その日から1週間ほどして、第二次大本事件が勃発。王仁三郎は逮捕収監され、結果として暗殺を免れました。
大本を襲った、国家による未曾有の宗教弾圧に対して、王仁三郎は感謝さえしたと言います。偶然にしてもいかにも王仁三郎らしいエピソードですね。
北一輝と王仁三郎は、ある意味では対照的であり、水と油のようにも見えますが、実は霊的な部分では強くつながっていたと思われます。実際、大正時代から二人は何度も密かに会っていたようです。
そこには、あの大川周明も関わってきています。逮捕された北一輝は取り調べの中で、かつて王仁三郎に会った時のことを次のように証言しています。
私(注 北一輝)、大川周明、満川亀太郎の三人で始めて同人(注 出口王仁三郎)と会ひました。大川は私と出口との会談を見て、只一回で出口は下劣な取るに足らぬやつであると断定しまして、私等に向つても再び会見の必要なしと申した位で、私も変な姿の様な印象丈けを残して其の後は心に止めない様にして居りました。自分の信仰に因る、神秘的体験から見ますと、大本教は神ではなく相当通力を以て居る邪霊である事が判りました。
かなり否定的ですが、これは大本事件後に自らも二・二六事件で逮捕された状況だったので、取り調べではこのように証言してもおかしくありません。現実的な意味で一緒にされたくなかったのでしょう。
まあ、結果として、宗教家としても革命家としても、また普通の人間の人生としても、王仁三郎の方が勝ってしまったところが面白いですよね。
実際には、北一輝は王仁三郎から何度か資金供与を受けています。そして、王仁三郎のある弟子の証言によると、北は「自分は立替えをやるから、立直しは出口さんに頼みます」と言っていたとか。これは実に興味深い近過去史のドラマですね。
ちなみに王仁三郎に影響を与えた(霊界物語で引用している)宮下文書の研究団体であった「富士文庫」のメンバーであった齋藤實は、二・二六事件において内大臣という立場であったために暗殺されています。これまた歴史の皮肉ですね。
まあ、この時代の歴史、人間模様は、「霊界」抜きではなかなか捉えきれません。
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