『長篇戯曲 砂漠の光』 仲小路彰 (新光社出版)
まだ読了していませんが、紹介しておきます。
この前紹介した(イスラム国による)グローバル・ジハードが着々と進行している現在、日本が別のシナリオ(グローバル・ファミリズム)を提起するために、この本は現代に蘇らねばなりません。
世紀の大天才、昭和の吉田松陰とも称されどほとんどその存在を知られていない仲小路彰の処女作。マホメット(ムハンマド)の生涯を戯曲化した作品です。大正11年刊。780ページに及ぶ超大作。
このたびその初版本を手に入れることができました。さっそく読み始めたのですが、もうすさまじい感動に襲われています。
仲小路に触れた時の感動とはいのは、いわゆる感激とはちょっと違う。以前お借りして読み、今は首相官邸に置いていただいている「夢殿の幻(聖徳太子伝)」もそうでしたが、本質の本質をつくあまりに重く深い内容を、仲小路は非常に優しく易しく語ってくれます。それを受け取る快感というか、普段経験できない感覚なのです。
難しい文体で書こうと思えばいくらでも書けるでしょう。しかし、それを、たとえば「お芝居」の形にしたり、「小説」の体をとったり、場合によっては「能」の台本にしたり、あるいは「音楽」をつけたりして表現するわけです。
私としては、出口王仁三郎の霊界物語をそれなりに読んできましたので、そういった体裁の文章の中から本質を読み取るのが比較的得意なのかもしれません。いや、そんな特殊な読書体験はなくとも、だれでもすんなり読み進め、そして理解することができるはずです。
難しいことを難しく表現するのではなく、難しいことを易しく表現できるところが、ホンモノの天才たる所以でありましょう。
先日紹介した「黒幕、N氏のこと」で丸山熊雄は「(東大哲学科の)卒業論文か、その後のものか」と語っていますが、仲小路本人と縁のあった方に直接確認しましたら、実際には、五高時代に書き始め、東大在学中に完成したのだそうです。つまり、十代の頃からこんなすごいものを書き始めていたと。
いや、まず文学としても超一流だと感じています。宗教的本質から人間の人生、そして男女の愛、家族の愛、そして敵対から、人類の愛と憎しみに至るまで、実に豊かに語られていきます。文章も素晴らしい。時々散りばめられる詩だけでも充分歴史的詩人レベルです。
この時代にイスラム教に興味を持ち、ここまで深く理解しているだけでも恐るべきことです。現代のイスラム研究家の方々が意識しているかどうか分かりませんが、明らかに東大においては、たとえば井筒俊彦という天才にそれなりの影響があったはずです。
当時も大変評判になり、それなりに売れたそうです。しかし、発刊翌年関東大震災があり、印刷されたものの大部分が焼けてしまったとのこと。
戦中の昭和17年でしたか、仲小路彰は東京にてレオナルド・ダ・ビンチ展を主催しますが、その時、この戯曲の一部分が上演されました。そして、それに感激した当時の若者たちが、焼け残った古書を求めて、回し読みをしたそうです。
そう、この物語の中には、憎しみや争い(戦争)の本質的原因が描かれているように思えるのです。そして、それを乗り越える思想、方法論としての宗教観が提示されている。
だからこそ、戦中に蘇り、そしてまた今蘇らねばならないと思うのです。特に今はイスラムの本質を理解しなければならない時です。
さらに言うと、仲小路がマホメットと聖徳太子の同時代性に注目している点も重要です。たしかに両者はほとんど同じ時代を(同じ緯度の東西で)生きました。そして、シルクロードを通じて潜在的に、いや具体的にもつながっている。
戦後まとめられた仲小路の聖人伝シリーズの最終巻は、上に紹介した「夢殿の幻」であり、その前が「砂漠の光(マホメット伝)」なのです。
私と仲小路では、あまりに頭の出来が違いすぎますが、仲小路の方から私のレベルにまで降りてきて語ってくれているので、その本質がなんとなく理解というか直観されてきています。
そう、今日も仲小路とご縁のあった方からお聞きしたのですが、まさに和光同塵、相手がどんな立派な政治家、軍人、実業家、学者であっても、あるいは山中湖の田舎百姓であろうと、それぞれに合った完全なコミニュケーションをしたとのこと。
きっと今、霊界から仲小路が私に語りかけてれているのでしょう。ですから、私には私の理解に基づく役目があるのだと思います。とにかく早く最後まで読み切り、そして、直感したとおりに行動したいと思っています。いやはやまたまた大変な書物と出会ってしまった。
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